福島第一原発事故で時間が止まった町
「去年の春、福島県の富岡町の方に『誰からも愛されている“夜ノ森の桜”をぜひ撮ってもらえませんか』と頼まれましたが、私は断りました。私はまだ桜が撮れる気持ちになれない。平成二十三年三月十一日の東日本大震災と福島第一原発の事故さえなければ、自由に富岡町に入れるものが、原発のために入れない。『桜に申し訳ない』と涙が出て、とても撮れないんです」と語るのは、福島県三春町生まれ・在住の写真家、飛田晋秀(ひだ ・しんしゅう)さん(67)。そんな同氏を福島県に訪ねた。【石川政実】
「全ての原発を廃炉に」
福島の写真家 飛田晋秀さんに聞く
飛田さんは元々、日本の職人の撮影を専門にしていたプロのカメラマンだった。しかし、3・11の重い現実が報道写真へと同氏を突き動かしていく。
飛田さんは震災直後、三春町の避難所(体育館)へボランティアで訪れた時、避難していた当時小学二年生の少女から「おじさん、わたしお嫁さんにいけるの」と質問されたのには、言葉が出なかった。
「原発事故を風化させてはならない」。そんな思いから、放射能汚染で避難を余儀なくされている富岡町、大熊町、双葉町、浪江町に何度も入り、シャッターを切り続けている。
震災から約一年後の二十四年一月、初めて現地に入った。そこで見たものは、地震で倒壊した家屋、荒れ果てた常磐線の駅、津波で破壊された漁業施設、野生化した牛や豚などの家畜、耕作が放棄されて雑草が伸び放題になっている田畑、誰も住んでいない新築の家など、3・11で時間が止まった“フクシマ”だった。
「現地へ行くと風の音と、地震で倒壊した家屋のトタンのバターン、バターンの音しか聞こえない。それだけに目に見えない放射能に汚染されていることが痛切にわかるんです」とやるせない思いを語る。
「車も人もいないのに、民家の電気は止まっているのに、一年たっても信号だけが機能しているんです。これを見た時、背筋が寒くなった。東電の作業員の車も、ここはほとんど通らないだけに、異常な光景ですよ」とも。
最後に飛田さんは「滋賀県に隣接している福井県には十四基の原発がある。政府が目論むように、これらが再稼働して、福島のような事故を起こしたら、琵琶湖は汚染されて、飲み水として何十年、何百年と使えなくなる可能性があります。ひとたび原発事故が起これば、人間の手ではどうすることもできない。二度と福島のような事故を起こさないためにも、すべての原発を廃炉にすべきです」と凛(りん)と前を向いた。
飛田さんは、写真集「福島のすがた」を出し、全国各地で写真展を開催している。滋賀県でも六日、大津市のなぎさ公園で写真展が開かれたが、「福島の時間が今も止まっているのがリアルに伝わってきてショックを受けた」(成安造形大の女子学生)などの声が数多く聞かれ、大きな反響を呼んだ。飛田さんのホームページは、飛田晋秀「福島のすがた」(http://www.hida-fukushima.com/)。なお、現地の写真と写真説明は、飛田さんの写真集から掲載したものです。










