評論家・八幡和郎氏にインタビュー 第3の矢が貧弱でアベノミクス成功は困難だった
評論家の八幡和郎氏(元経済産業省官僚)は「民進党が本気で政権復帰しようとするなら、共産党との協力が足かせになる」と野党共闘を辛辣(しんらつ)に批判して、自民党や民進党右派から高い評価を受けている。こんな発言の一方で「憲法解釈で集団的自衛権の行使を容認する安保法制ができたのだから、憲法改正は必要ない」とも。そんな辛口批評の八幡氏にインタビューし、参院選の争点を聞いた。 【石川政実】
―与野党とも消費税率引き上げの延期を掲げていることについて、うかがえますか。
八幡 消費税率再引き上げは断行すべきだった。しかし再延期は絶対にしないという気迫が与党になかった。国民も気分的に再延期に流された。引き延ばしは若い世代の負担を増やすだけです。
法人税や所得税は景気に左右されるので、社会保障財源としては限界があります。だから消費税を引き上げるべきだった。もっとも民進党が先に再延期を打ち出したのだから与党の失点にならないのが重ね重ね惜しい。
アベノミクスの評価は。
八幡 雇用状況の改善などを見ると、アベノミクスが大企業だけに恩恵をもたらしたとは思わないが、金融や財政などの第一の矢や第二の矢に比べて、産業の競争力強化や地域振興などの第三の矢が貧弱すぎて成功するのはもともと困難だった。
だが野党がよりよい対案を出しているわけでもないですがね。
―安倍首相は今回の選挙で衆参三分の二になれば、憲法改正に踏み切りるのは確実だが。
八幡 世界が憲法第九条の理想に近づいてくれればいいが現実は違う以上、国際的な責任遂行を解釈の変更で徐々にでも拡大しないと、アメリカ大統領選の共和党候補のトランプ氏からのように「日本は責務を果たしていない」という批判を受けることにもなります。
そこで改憲だという人もいるが、憲法解釈によって集団的自衛権行使などで充分対応できると思うので、憲法九条を理由とした改憲なら不要というのが私の立場です。私は平和憲法の建前は守りつつ、運用は柔軟にするのが賢明だと思います。
―民進党と共産党の野党共闘については。
八幡 地方レベルと違って、民進党が憲法とか外交で考え方が違う共産党との閣内・閣外協力は、国政レベルでは疑問です。また社民党は、共産党と連携すれば存在意義を失う。
自民党と公明党との連立とどこが違うかと言えば、自民は公明との協力で中道化しているので好ましいが、民進党が共産党と協力すると、中道から左に離れることを意味するので政権復帰にはマイナスになると思います。
―今回の参院選では、安倍内閣の高い支持率を背景に、自公、おおさか維新など改憲勢力が三分の二を獲得するか、それとも野党共闘が成果を出すかですが、選挙情勢については。
八幡 英国のEU離脱で経済状況に伴う影響が少しはあるだろうが、選挙結果に劇的変化はありません。議席数うんぬんより民進党が厳しい結果をどう受け止めるかが問題です。
でも野党共闘の短期的効果は少しあって、改憲反対の野党が三分の一を確保できるか、ぎりぎりのところでしょう。
ただ民進党の左傾化が進むと本来の意味のリベラル派が参院選後に離党するでしょうから、この選挙で野党が三分の一を確保するかどうかは、あまり意味がないと思います。
―今回の選挙を一言で言えば。
八幡 「共産党一人勝ちと維新堅調選挙」です。







