開学 生かし人もまちも元気に!びわこリハビリテーション専門職大学
実践力と創造力が身につく専門職大
少人数教育で優れた教授陣
キャリア育てる独自の展開科目[
「2025年問題」在宅医療への転換
―「健康寿命の延伸」や「地域共生社会」の実現で重要な役割を担うリハビリ人材を養成する専門職大学が開学しますが、まず始めに、住み慣れた地域で暮らし続けるための地域包括ケアシステム(注3)の整備について、東近江市の現状はどうなっているのでしょうか。
小椋市長 滋賀県の男性の平均寿命は日本一、女性は4位で非常に長寿県ですが、一方で全ての団塊の世代が後期高齢者になり、医療費・介護費の急増が懸念される「2025年問題」(注4)への対応があります。今の病院中心の医療では病院のベッド数が必然的に足りなくなるので、在宅中心の医療に転換しなければならない。
このため東近江市は、健康寿命を延ばす取り組みとして、高齢者が要介護になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる仕組み「地域包括ケアシステム」の整備を、地域の医療体制にあわせて進めているところです。
例えば、旧八日市市は地域医療を支える開業医が充実しているので、核となる総合医療センターを整備しました。旧蒲生町は、在宅医療、在宅ケア、在宅看取りまでを実践できる「総合家庭医」を育成しています。
もう一点つけ加えると、東近江市は、健康な体と心づくりに取り組める「健康寿命の延伸」に恵まれた環境です。旧市町ごとに図書館、ホール、体育館、グラウンドが7つずつあり、さらに鈴鹿から琵琶湖まで広大で多様性のある自然環境で、トレッキングやハイキング、カヌーなどのスポーツが気軽に親しめる。これも合併のスケールメリットです。
冨田 駅前サテライトキャンパスからにぎわい
小椋 若者増え活気、健康政策も刺激
小山 東近江独自の連携モデルを
びわリハ大特徴と強み
―「2025年問題」というと、県内では地域包括ケアの支え手であるリハビリ人材の要望は高く、2025年に3千人が必要とされるのに対して、1500人(18年4月現在)が不足しているとされます。
このような地域・時代の要請を受けて、前身の滋賀医療専門学校と比べて教育内容や人材養成はどう変わりますか。
小山理事長 専門職大学とは、実践力の専門学校と、学術研究の色彩が強い大学の「いいとこ取り」した高度な職業教育の大学です。
地域の行政・産業と連携して人材を養成することになっており、現場からのイノベーションが期待されています。
文科省が認可した国内のリハビリ系の専門職大学としては、昨年初めて開学した1校に続いて、びわこリハビリテーション専門職大学が国内2校目で、本学はリハビリテーション学部に理学療法学科(定員80)と作業療法学科(同40)の2学科を設置します。
びわこリハビリテーション専門職大学では、病院や施設だけでなく地域で活躍できるよう、健康寿命をどう延ばせばいいのか問題提起して解決できる、創造力の豊かな人材を養成します。
専門学校時代は病院への就職のみを前提にして、それに特化した即戦力を養ってきましたが、この点が専門学校との違いになります。
冨田社長 予防医学ですね。受験生の4年制志向が強まる中で、現場に即した実践力をつけながら、さらに学士相当の学位も取得できるのは魅力です。
小山理事長 そのほかの強みとしては、第一に教員1人当たりの学生数が挙げられます。教員1人当たりの学生数は約12人と、非常に手厚い教育体制となっていますので、「面倒見の良い大学」として学生をしっかりサポートしたい。
もちろん教員数だけでなく、大学で教壇に立った理論重視の教員や、実務経験の豊富な教員などバランスのとれた教員体制となっています。また、前身の滋賀医療技術専門学校は、高い国家試験の合格率を誇ってきましたが、そのノウハウも引き継ぎます。
多彩な人材養成
―話題を少し転換しますが、滋賀県は平均寿命と要介護度に基づいた客観的な健康寿命(体の健康状態)は、男女ともに全国トップクラスです。ところが、同じ国の統計で「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」と本人に問う主観的な健康寿命(心の健康)では、男性は72・3歳で16位、女性にいたっては74歳で42位と、「体の健康」と「心の健康」で大きな乖離(かいり)が見られますが。
冨田社長 医学の進歩は目覚ましく、人間の寿命は延びました。がんもやがて克服されるでしょう。しかし、加齢に伴う気力の衰えは薬では治らない。やはり、人間同士の支え、心の支えが必要でしょうね。
小山理事長 そこは、日常生活から寄り添える人材が求められます。健常者だけでなく、高齢者も、障害をもった人も、心身ともに健全に共生できる地域をつくるお手伝いをしたい。そんな人材を育てるため、本学は展開科目においてユニークな科目を用意しています。
理学療法学科では、「ヘルスプロモーション」、「生涯スポーツ」、「生活工学」をキーワードにした科目を用意しています。
このうち「生涯スポーツ」では、フィットネス論やランニングトレーニング論、障がい者スポーツ論を学び、スポーツを通じた健康の維持・増進について探究します。地域との連携については、例えば、最近はウォーキングやランニングを楽しむ人が多いので、スポーツイベントを兼ねた講座を開くのもいい。
作業療法学科においては、ライフステージの「児童期」、「成人期」、「老年期」ごとに、必要なリハビリテーションを提供できる人材を養成するための科目を用意しました。
このうち「老年期」の科目では、高齢者が自分らしく住み慣れた地域で生活できるよう支援の仕方を学ぶので、地域と連携するのであれば、例えば、高齢者に自宅から外出してもらい、精神的にリフレッシュしてもらう仕組みを考えて、地域共生に貢献したいです。

小椋正清(おぐら・まさきよ)氏=滋賀県永源寺町(現東近江市)生まれ。長浜警察署長、県防災危機管理監、理事員(防災危機管理担当)を経て、2013年に東近江市長に初当選。17年に再選。現在、滋賀県市長会会長を務める。68歳。
大学開学生かし地域を活性化
―開学をまちづくりにどう生かしますか。
小椋市長 若者が都会へ流出する全国共通の問題がある中で、開学によって若者が東近江市に入ってくれるのはありがたい。大学の定員は120人。4年後には480人が通う。絶えずこのまちに若者が滞在してくれることが、まちづくりへの最大の貢献です。様々なイベントに参加してほしいし、市民にも積極的な関わりを促し、地域の活気を生み出したい。さらに全国各地で就職した卒業生が、「私は東近江市の大学に通っていた」と宣伝してくれる知名度アップの効果も期待しています。
加えて、市職員への刺激にもなる。行政職は専門化、高度化しており、とりわけ市民の健康へのニーズが高まっています。学生の地域活動が、健康寿命延伸の取り組みに良い影響を与えてくれるでしょう。
―地域経済の観点からはいかがですか。
冨田社長 全国の中心市街地活性化の7割が失敗している中で、何らかの形で近江鉄道八日市駅前に元気になる核をつくりたいと以前から考えていました。
そこで商工会議所として、八日市駅から徒歩数分の八日市商工会議所ビルのフロアー活用を提案したところ合意をいただき、今年4月から東近江市北坂町のキャンパスとは別に学校法人藍野大学の八日市サテライトキャンパスが開設されます。
毎年新しい学生が入り、産学官で連携できれば、従来の中心市街地活性化とはちょっと違う観点で取り組みを進められます。しっかり若い芽を育てていきたいと思います。
―都会ではなく、自然に恵まれ、住民との距離も近い東近江市に開学する抱負を聞かせてください。
小山理事長 東近江独自の地域連携のモデルをつくりながら、老若男女も、障害のあるなしに関わらず住み慣れた地域で生き生きと暮らせる「地域共生社会」の一翼を担えるよう、「骨を埋める覚悟」でしっかりがんばっていきたいと思います。

小山英夫(こやま・ひでお)氏=大阪府生まれ。学校法人藍野大学理事長。同法人は、びわこリハビリテーション専門職大学をはじめ、藍野大学、同大学大学院、同大学中央研究施設、藍野大学短期大学部、藍野高等学校などを運営。57歳。
―最後に、冨田社長と小椋市長から開学の期待を込めて締めくくって下さい。
冨田社長 リハビリ系の特色ある専門職大学であり、市内2番目の大学が開学することに大きな期待を寄せます。地域がどう関わって、学生からエネルギーをもらえるか、そして地域もお返しできるのか。経済人として相互作用に期待しています。
小椋市長 人口11万4千人余りのまちには、にぎわいを凝縮した核が絶対必要です。このため、中心市街地の活性化には財政的、人的にエネルギーを注入して、新たな時代に対応できるにぎわいを取り戻そうとしています。そういった中で学校法人藍野大学のサテライトキャンパスが駅前に開設されることで、駅前周辺のにぎわいづくりを期待しています。
もう一つは、健康寿命延伸の観点から、計り知れないメリットが出てくると思いました。専門的な知識と技術を日常的に提供してもらい、それが市民にとってプラスになることは間違いない。大いに期待しています。
(注1)健康寿命=生まれてから死ぬまでの命の長さを「寿命」というのに対し、健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間を「健康寿命」という。健康寿命の算出方法はいくつかの指標が用いられ、客観的指標は男女ともに全国上位になっているが、主観的指標では低い値になっている。
(注2)地域共生社会=地域包括ケアシステムを確立することで地域共生社会の実現が求められている。誰もが共に生活できる地域社会で、子ども、高齢者、障がい者など全ての人が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことのできる社会。
(注3)地域包括ケアシステム=高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるため、地域の実情に合ったネットワークで、医療・介護・予防・住まい・生活支援が確保される体制。
(注4)2025年問題=人口ボリュームの大きい団塊世代全てが75歳以上となる2025年ごろには、同世代で大きな病気を患う人が増え、社会保険費の膨張や医療機関が足りなくなると指摘されている。
びわこリハビリテーション専門職大学Q&A
Q1キャンパスの開設地は?
A1びわこリハビリテーション専門職大学は、医療人材を養成する学校法人藍野大学(本部・大阪府茨木市)が運営する県内初のリハビリ系専門職大学(4年制)で、前身の滋賀医療技術専門学校を改装したキャンパス(東近江市北坂町)を開設する。さらに学校法人藍野大学の八日市駅前サテライトキャンパス(同市八日市東浜町)も設ける。
Q2設置される学科と教育内容は?
A2リハビリテーション学部に理学療法学科(定員80)、作業療法学科(同40)が設置される。
理学療法学科は、様々な疾病・障がいに対して、基本動作能力の回復や維持、障がいを予防し、自立した生活が送れるよう支援していく医療・介護の専門職である理学療法士を養成する。
履修モデルの「ヘルスプロモーション」、「生涯スポーツ」、「生活工学」を通じて、地域住民の課題を解決する技術を学び、健康、スポーツ、福祉の分野で活躍する力をつける。
作業療法学科は、人が営む生活行為=「作業」に焦点を当てることで、その人らしい生活を送れるように支援していく専門職である作業療法士を養成する。
人が営む生活行為に焦点を当てるため、「児童期」「成人期」「老年期」の3つの履修モデルを用意し、住民年齢によって異なる生活課題を深く理解し、支援する知識を獲得する。
Q3卒業後の進路
A3病院施設、福祉施設、スポーツ・フィットネス施設、地方自治体、教育・研究機関などで、将来的には、健康増進施設、企業の健康推進室、健康関連企業、スポーツ・健康・食・ファッション関連企業、福祉機器メーカーなどの新しい職域へ広がると想定している。









