中央政界特報

■平成30年8月23日(木) 第5373号

「政治特報」

 9月7日告示、20日投開票の自民党総裁選。安倍晋三首相は「勝つ」だけではなく、石破茂前幹事長を突き放す「圧勝」を目指している。

 これまでの安倍首相の戦績をみてみよう。
 1度目は2006年9月20日。
 安倍氏、麻生太郎氏、谷垣禎一氏の3人が立候補し、安倍氏が国会議員票67、党員票197の計264票。麻生氏の議員票69、党員票67の136票、谷垣氏の議員票66、党員票36の102票を押さえて選出された。
 2度目は12年9月26日。安倍氏、石破氏、町村信孝氏、石原伸晃氏、林芳正氏が出馬し、決選投票で安倍氏が議員票108、石破氏が議員票89で、安倍氏が勝利。
 3度目は15年9月8日、無投票で選出されている。
 このとき野田聖子氏が投票日ぎりぎりまで頑張ったが20人の推薦人確保にあと1人及ばずだった。
 安倍首相はこう声を高くしている。
 「これまで4選をしているのは佐藤栄作首相ひとりのみ」
 自身がそれに「続く」と言わんばかりに。
 投票日は目前に迫ってきている。
 ここにきて流れは安倍首相優位に。
 態度を明らかにしていなかった石原派も「安倍首相支持」に。
 これで細田派(94人)、麻生派(59人)、岸田派(50人)、二階派(44人)、石原派(12人)をひきつけた。
 竹下亘会長が迷いに迷っていた竹下派(55人)も衆院議員(32人)の大半が安倍首相サイドに。
 石破氏支持は現時点で石破派(20人)と竹下派の参院議員。
 態度を鮮明にしていない谷垣グループ(約20人)、無派閥(約70人)がどう動くかだが、流れは安倍首相に。
 各世論調査の「首相にふさわしい人」でも安倍首相が石破氏を上まわっている。
 それでも安倍首相の表情は硬い。
 そこには、「確実に勝利できる」という保証がないこと。
 これまで現職の首相が総裁選で敗れたことが1度だけだがある。
 01年の総裁選。橋本龍太郎首相が小泉純一郎氏に。
 このとき橋本氏は安倍首相のように派閥の多数派工作で圧倒的に優位に立ち「再選間違いなし」といわれていた。
 それが田中真紀子氏とタッグを組んだ小泉氏に痛恨の逆転負け。
 安倍首相の弱み。それは地方票だ。
 12年の総裁選でも地方票では石破氏に負けている。
 酷暑の中、安倍首相は地方をかけめぐっている。
 12年のリベンジもあり、「勝つ」だけでなく、絶対的な圧勝を目指して。

「盟友」

 安倍晋三首相が大きなショックを受けている。
 俳優津川雅彦氏が他界。安倍首相は芸能界に多くの知人がいるが、その中で津川氏は一番の親友であった。
 「ショックを受けています。残念であります。さみしい思いです」
 津川さんが亡くなったのは8月4日、心不全で。
 亡くなったことがわかったのは8日。
 報道陣の前での安倍首相は、それは気落ちした顔だった。
 62歳の安倍首相に対し、津川さんは78歳。
 16歳年上の津川さんとの強いつながりができたのは、第1次政権を体調不良でわずか1年で退任したとき。
 12年の総裁選で返り咲いたが、このとき安倍首相の背中を強く押したのが津川さん。
 失意に沈んでいた安倍氏を励まし、もう一度政権の座にと、民間人による支援グループを立ち上げている。
 自らは発起人に名前を連ねている。
 安倍首相は政権の座に復活してからは、毎年のように正月早々に会食している。
 津川さんと食事をすることを楽しみに。
 今年も1月4日、東京銀座のブルガリ銀座タワーのプライベートルームで。
 この日、安倍首相は昼間、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ宴会場「鶴の間」での経済3団体共催の新年祝賀パーティーに出席。
 そして夜6時過ぎから。
 いつもは2人だけでの会食だが、今年は女優木村佳乃さん、歌手の泉谷しげるさんらを交えて。
 津川さんは拉致問題のポスターでも安倍首相に協力している。

「石原氏の決断」

 石原伸晃元環境相が決断した。
 9月20日の自民党総裁選で安倍晋三首相を支持することを。
 自民党内で勢力を競っている派閥は細田派、麻生派、二階派、岸田派、竹下派、石破派、石原派、谷垣グループ。
 総裁選に出馬する石破派を除いての各派の動き。
 まっさきに安倍晋三首相の「3選」支持を明らかにしたのは細田派、麻生派、二階派。
 そして、岸田文雄政調会長が出馬を辞退したことで岸田派も安倍首相支持に。
 竹下派は安倍首相支持、石破茂氏支持に二分。
 注目されていた石原派だが、8月8日に石原伸晃会長が「安倍首相支持」の決断を。
 石原派の勢力は12人。自民党派閥では最小だ。
 だが、総裁選での12人は大きな勢力。
 安倍首相と石破氏が激しくぶつかり合っているだけに「12人」の石原派は大きい。
 石原派からは現在の内閣に一人の閣僚もいない。
 14年、環境相をつとめていた石原氏が除染廃棄物の中間貯蔵施設をめぐって失言。以来、石原派は「冷や飯組」に。
 9月の総裁選は結果によって石原派、そして石原氏にとって、復活の足場になる。
 石原氏は12年の総裁選に出馬している。国会議員票36票、党員票1票を集めている。
 「いまでも総裁を目指す意欲は強い」(永田町筋)
 安倍首相支持の決断は、石原氏の次の総裁選出馬への意思表示か。
 父親の石原慎太郎氏も、1989年の総裁選に出馬している。結果は海部俊樹氏の前に大敗。
 「政権の座」が石原家の目ざすものなのだ。

「初めての国へ」

 就任1年間で、60余の国・地域を訪れている河野太郎外相。
 歴代外相では群を抜く多さだ。
 まわりのほうが、あまりのハードさを心配しているほど。
 実際、昨年12月21日には右尿管結石症で入院。それでも22日午前の閣議は欠席したが、その日の午後には退院。公務に復帰している。
 海外に出ているだけではない。
 河野外相の外国訪問で特徴的、際だっているのは、これまで日本の外相が訪れなかった国に足を運んでいること。
 主要国、それに国際会議が開かれている国だけに出かけているのではない。
 「直接、出向いて顔をあわせるのが外交には一番大切なこと」の考えを実行している。
 モザンビーク、バーレーン、モルディブはこれまで日本の外相は訪問していない。
 それに大変な「親日国」で知られるブータンも。
 この4カ国に河野外相は飛んでいっている。
 中東のオマーン。過去に、日本の外相が出かけていったのは、遠い昔に。
 それを河野外相は27年ぶりに訪問している。
 インド洋に浮かぶモルディブを訪問したのは正月明け早々の1月6日だった。
 約1200の島からなるモルディブの人口は約40万人。
 中国が「一帯一路」構想で大規模な投資をおこなっている。
 河野外相の訪問は中国の動きをにらんでのもの。
 国連の常任理事国入りが長年の悲願である日本。
 国連の投票権は国の大小にかかわらず1国1票だ。

「伸び悩み」

 国会は夏休み中。永田町からは議員の姿が消えて静かに。
 自民党議員は各派それぞれの派閥研修会に。
 夏は超党派議員が呉越同舟での海外視察も。
 そんなこんなで静まりかえっている永田町だが、動いているものがある。
 それは世論。各世論調査が発表されているが、野党の支持率が伸びない。
 「1強」を批判されている自民党が着実に支持率を伸ばしてきているのに対し、「1強」を批判している野党は下落傾向に。
 なかでも目につくのが立憲民主党。伸び悩みどころか、下落傾向に。
 立憲民主党の支持率は発足当初は10パーセント台にあった。
 野党の中で群を抜く高さだった。
 それが、ここにきて10パーセントを割り込んでしまっている世論調査結果も。
 支持率について永田町では「支持率で政治をしているわけではない」の声があるが、支持率に大きく左右されているのは事実。
 「いったん落ちた支持率を回復させるのは難しい」が永田町の常識でもある。
 これからしても下落に歯止めがかからなくなっている立憲民主党は厳しい。
 枝野幸男代表は「政権を取る」のトーンを高くしている。
 それには支持率を右肩上がりに修正しなくては。
 まず来年夏の参院選でどこまで議席を増やすことができるか。
 現状の立憲民主党は他の野党との連携には消極的。
 夏が終わり、秋になれば党首になってやがて1年。枝野代表の真価が問われる。

「進次郎氏はどっちに」

 小泉進次郎筆頭副幹事長の動きに注目が集まっている。
 自民党総裁選の「カギ」を握っている。
 安倍晋三首相は細田派、麻生派、二階派、岸田派、石原派と竹下派の衆院議員を固め、石破茂氏は自分の派閥「水月会」と竹下派の参院議員を。
 国会議員で圧倒する安倍首相に対し、石破氏は地方票で。
 「勝敗の行方はまったくわからない」(永田町筋)
 そこで小泉氏が「キーマン」に。
 小泉氏はどの派閥にも属していない。
 無派閥組は約70人ほど。小泉氏と無派閥組がどっちにつくか。
 政権側が神経をとがらせるのは01年の総裁選の結果に起因している。
 現職の橋本龍太郎首相が圧倒的に優勢だった。それを小泉純一郎氏が、当時際立った人気の田中真紀子氏と組んで大逆転。
 小泉氏が石破氏側にまわると、01年の総裁選の再現も十分に考えられる。
 小泉氏は12年の総裁選では安倍首相ではなく、石破氏に投票しているという事実もある。
 はたして9月の総裁選ではどっちに投票するか。
 「コメントすることではない」と口をつぐんでいるが、こんなことももらしている。
 「選挙はやってみなければわからない」
 なんとも意味深だ。
 12年のとき、小泉氏が「石破氏」に決めたのは9月26日の投票日の約2週間前の9月14日。
 決めたポイントは「危機感」と。
 小泉氏は「将来の首相」に名前があがっている。それだけに、どっちに投票するかで、小泉氏の将来も違ったものになってくる。

「ファーストレディは」

 安倍晋三首相が3選をものにするか。
 それとも石破茂元幹事長が勝利するか。
 安倍首相、石破氏の競り合いは、激しさを増している。
 自民党総裁は総理大臣に直結している。このことからも、安倍首相と石破氏の戦いは、ファーストレディーにも直結だ。
 安倍首相夫人の昭恵さんに対するのは石破氏夫人の佳子さん。
 昭恵夫人はファーストレディーの座に第1次政権時代とあわせると6年半以上。
 トランプ大統領のメラニア夫人とも首脳会談のたびに顔を合わせている。
 安倍首相が外国訪問のとき、昭恵夫人の手を握り政府専用機のタラップをあがっていく様子は、すっかりおなじみになっている。
 安倍首相より8歳年下の55歳。
 石破氏の佳子夫人は60歳の石破氏と同じ年。
 慶応大学法学部の同級生だ。
 出会ったのはドイツ語クラブで。
 男子学生の間では大変な人気が。
 それを石破氏が熱をあげて猛アタック。
 佳子夫人の正義感の強さに「惚れ込んだ」ともっぱら言われている。
 佳子夫人は12年の総裁選のときには神田明神での陣営の「必勝祈願」に参加している。
 結果が決まるまで、あと1カ月もない。
 国会議員票は安倍首相が圧倒的に優位。
 だが、地方では石破氏の人気が高い。
 最後の最後まで勝敗の行方はわからない。
 はたしてファーストレディーの座に就くのは昭恵夫人か、それとも佳子夫人か。