中央政界特報

■平成30年8月30日(木) 第5374号

「政治特報」

 ガチンコ勝負になっている安倍晋三首相と石破茂元幹事長。共通していることがある。「座禅」だ。「無」の境地を会得しているのは―。

 来日外国人観光客で大にぎわいな東京の下町、台東区の千駄木、根津、谷中。
 その中でもとくに人気なのが谷中。
 ここは落語家古今亭志ん生、馬生、志ん朝ら落語家が住んだ、江戸の風情が色濃く残っている町。
 JR日暮里駅西口から歩いていくと、志ん朝も通ったそば屋、そして佃煮屋が。
 さらに進むと夕焼けが美しく見える石段、「夕焼けだんだん」のある谷中銀座商店街に。
 谷中はまたお寺の町でもある。50余ものお寺が。その中央にあるのが「全生庵」(ぜんしょうあん)。
 山岡鉄舟が明治維新に殉じた人々の菩薩を弔ったといわれている。
 中曽根康弘元首相も政権の座にあるとき通ったこの全生庵で安倍首相は折りをみて座禅を組んでいる。
 はじめて全生庵を訪れたのは第1次政権をわずか1年で退陣した半年後。
 このときの胸の内を、今年8月11日、地元山口県の会合で言っている。
 「自信も誇りも砕け散った」
 翌12日には長門市の父、故晋太郎氏の墓参りをし「勝利」の誓いを。
 初めて座禅を組んだあと、毎月第3木曜日には全生庵に。
 石破氏もまた、この全生庵で座禅を。
 そんな二人が、一緒に並んで座禅を組んでもいる。
 山本有二衆院議員が仲介をして。
 それも一度ではなく複数回。
 座禅は心を無にし、自身を見つめなおす。
 いま安倍首相と石破氏は真正面からぶつかり合っている。
 石破氏の安倍政治に対する批判のトーンは高い。
 3選に「不動心で臨む」という安倍首相に石破氏は「正直、公正でなければならない。国民に信用されなくては」と、舌鋒は激しさを増している。
 安倍首相も石破氏も、全生庵で座禅を組んでいたときの「無」の境地だろうか。
 戦いはこれからが本番だ。
 全生庵での座禅は安倍首相、石破氏だけではない。
 国民民主党の代表選に出馬の玉木雄一郎氏も、つい先日ここで座禅を組み「無」の境地を求めている。

「対照的」

 9月20日の自民党総裁選。
 真正面からの激突となる安倍晋三首相と石破茂元幹事長。
 決選を前にした夏の過ごし方はまったく対照的だ。
 「静」と「動」、「余裕」と「緊張」、「攻め」と「受け」といった感じ。
 安倍首相は8月15日から山梨県鳴沢村の別荘にこもり、ゴルフを満喫。
 16日には小泉純一郎元首相、麻生太郎元首相らと河口湖町の「富士桜カントリー倶楽部」でプレー。
 翌17日には場所を移して山中湖村の「富士ゴルフコース」で。
 その夜は昭恵夫人をまじえ経団連の名誉会長の御手洗富士夫氏、榊原定征氏らとバーベキューも。
 石破氏のほうは記者会見、派閥「水月会」の会合、講演会、そしてテレビ局の「ハシゴ」を。
 発言も対照的だ。
 石破氏の口からはつぎつぎに安倍政治批判が連発されている。
 10日の記者会見では実に1時間半ほども。
 トーンを高くして主張しているのは「謙虚で正直」「透明、公平」。
 憲法改正については「9条の改正はすべきではない」と。
 総裁選の投票まで1カ月を切っているとはいえ、もう全開状態。
 「全身全霊で戦っていく」と。
 安倍首相に「討論」も迫っている。
 安倍首相のほうは、「静」で受けている。
 14日に地元山口県入りしたとき、宇部市のすし店主から色紙を求められ「不動心」と。
 もっとも別荘入りしてから山梨県議と会食したりと、地方票の取り込みをおこたっていない。

「元日銀マン」

 9月4日投開票の国民民主党代表選。
 玉木雄一郎共同代表と津村啓介衆院議員による一騎打ちに。
 玉木氏は民進党時代にも代表選に立候補しており、希望の党では代表。
 そして民進党との統合による国民民主党では大塚耕平氏と共同代表に。
 その名と顔は国民の間にも知れてきている。
 「WHO?」は津村氏。
 党のトップを決める代表選に出馬するのは、国会議員になってから初めてのこと。
 その名と顔はまだ知られていない。
 代表選出馬には国会議員と地方議員の各10人の推薦が必要だが、これをクリアしての1対1の対決に。
 玉木氏との違いを明らかにしている。
 「野党共闘を明確にする」と断言。
 意欲満々、強気だ。
 1971年10月27日、岡山県津山市出身。
 中学、高校は麻布。東京大学法学部を卒業し日本銀行に入行。
 英国オックスフォード大学でMBAを取得。
 日本銀行は30歳の時に退職。
 民主党候補者公募で15年の衆院選に出馬し、当選。
 民主党時代、鳩山内閣の内閣府政務官に。
 「初心忘るべからざる」が座右の銘だ。
 大塚氏は出馬せずに、玉木氏を支援することを明らかにしている。
 津村氏にとってはかなり厳しい戦いになる。
 各世論調査では、国民民主党の支持率は寂しい。1パーセントにも達していない世論調査のほうが多い。
 まず、どこまで国民の支持を得られるようにすることができるか。

「小泉元首相の見方は」

 8月15日夜、自民党の歴代首相が顔を揃えた。
 場所は山梨県鳴沢村の笹川陽平日本財団会長の別荘。
 安倍晋三首相の別荘もこの鳴沢村にある。
 集まった歴代首相は小泉純一郎氏、森喜朗氏、麻生太郎氏。
 昨年も8月15日に、この顔ぶれで会食している。
 福田康夫氏の姿は昨年、そして今年も見られなかった。
 「1カ月後に自民党総裁選が控えていることから、会食ではもっぱら総裁選が話題になったのでは」(永田町筋)
 そこで注目されるのは小泉氏。
 政権の座を降りてからの小泉氏は「原発ゼロ」をライフワークにしている。
 講演会で全国を飛び回っては「日本に原発は必要ない」と。
 そして必ず口にしているのが痛烈な安倍首相批判。
 5月の新潟県知事選のときにも、新潟での講演で安倍首相批判を。
 小泉氏は安倍首相が総裁3選を目指していることにも厳しい見方をしている。
 「難しいんじゃないか。信用されなくなってきている」
 そう言い切っていた。
 党内の7割の国会議員が「安倍支持」になってきてからは総裁選後に触れている。
 「3選されても来年の参院選はどうなるか」
 一貫して安倍首相を批判する姿勢でいる。
 それだけに鳴沢村での会食で、小泉氏はどう語っているか。
 昨年の会食の様子は歴代首相が「大笑い」し、盛り上がっている写真が流されていたが。

「英気を養う」

 今年の安倍晋三首相の夏休みは8月6日から。
 山梨県鳴沢村の別荘にはいったのは8月5日。
 この日、昼前に東京・三番町の千鳥ヶ淵戦没者墓苑で献花。北の丸公園の日本武道館での全国戦没者追悼式に出席。
 鳴沢村に向かったのは夕方。その日は笹川陽平日本財団会長の別荘で小泉純一郎氏、森喜朗氏、麻生太郎氏の元首相と会食。6日は早朝からカントリークラブで小泉氏、麻生氏らとゴルフを。
 小泉氏からの身ぶり、手ぶりのオーバーなアドバイスには苦笑いを。ドライバーはまっすぐに飛んでいた。
 安倍首相が夏休みをとったのは今年で7度目になる。最初は第1次政権のときの07年で2日間。
 第2次政権になってから、13年は11日間、14年は14日間、15年は10日間、16年は7月に7日間、8月に5日間と2度に分けて。
 昨年は衆院選を控え、あわただしい中、3日間。
 15日夜に別荘入りし、17日の夜中に別荘を離れ、18日には首相公邸でハガティ駐日米大使の表敬訪問を受けている。
 ちなみに歴代首相の夏休みだが、小泉氏は政権最後の06年は8日間だったが、01年から05年までは毎年約2週間とっていた。
 福田康夫氏は08年に6日間、麻生氏の09年の夏は衆院選の街頭演説で休みなし。
 民主党政権では菅直人氏が10年に6日間、11年は支持率が20%を割り込み、休みどころではなかった。鳩山氏は夏前に退陣している。
 英気を養ったところで9月には自民党総裁選があり、10月には訪中も予定されている。
 忙中閑の夏休みに。

「鳥取の時代になるか」

 9月20日投開票の自民党総裁選。
 石破茂元幹事長は強気だ。
 「正直、公正、石破茂」のキャッチフレーズを掲げ、全国を駆けまわっている。
 狙いは自信を持っている地方票。これで安倍晋三首相圧倒をめざしている。熱いのは石破氏の地元、鳥取県。
 鳥取県は「星取県」に改名している。と言っても観光政策の面でだが、県民は「星取県」に自信満々。
 鳥取県は環境省が行った全国星空継続観察で全国1位に。
 県内のどの市町村からも「天の川」を見ることができる。
 流星も見やすい。まさに「星取県」だ。
 星空だけではない。なにかと鳥取県は話題になっている。
 スターバックス・コーヒーが日本で最後、47番目にオープンしたのも鳥取県。15年のことだ。
 鳥取県には強いものがある。その第一は鳥取砂丘。これは絶対的。
 ゲゲゲの鬼太郎の故郷、境港市は鳥取県。ここには中国からの「爆買いツアー」の大型船が接岸する。
 スイカ、梨、ラッキョウは鳥取県の名産。そしてカニもどっとばかりに水揚げされる。
 県民の間での「時代は鳥取県」の声は高い。
 そして、いま石破氏が安倍首相に挑んでいる。
 総裁選で勝利すれば、政権の座に。
 日本丸の舵を握ることになる。
 そのときこそ「鳥取県の時代」に。
 安倍首相は山口県出身。長州からは多くの首相が誕生している。
 鳥取県からはまだ1人の首相も出ていない。

「観光スポット」

 全国で7万人超の人が熱中症で緊急搬送された異常な暑さの夏もそろそろ終わり。
 秋風も吹き始めた。夏の間、海水浴客で賑わった湘南海岸も、目に見えて寂しくなってきている。
 湘南といえば江ノ島を中心にした一帯がイメージに。
 これに「湘南は鎌倉、江の島だけではない」の声をあげ、観光施設の充実を目指している茅ヶ崎、大磯、平塚。
 その中で、今年の夏も多くの人でにぎわっていたのが大磯。
 ここには、鎌倉、江の島とは違った観光スポットがある。
 旧吉田茂邸だ。戦後日本の旗をふるった吉田茂元首相の邸宅。
 09年に焼失したが、「大磯の目玉」として再建され、昨年4月から一般公開されている。
 大磯はその温暖さから避暑地、避寒地として明治時代から多くの政界、財界、文人が別荘を構えている。
 首相経験者も伊藤博文、山県有朋、大隈重信、西園寺公望、寺内正毅、原敬、加藤高明、吉田茂と8人が住まいを。
 圧倒されるような正面の兜門を入ると、日本庭園が。庭園の一角には銅像が建っており、丸いメガネ越しに太平洋を見ている。その先には平和条約を締結したサンフランシスコが。
 心筋梗塞で他界したのは67年10月20日、89歳だった。
 吉田元首相は「新憲法解散」「なれあい解散」「抜き打ち解散」「バカヤロウ解散」と解散を4度やり、5度内閣を率いている。
 長期政権を目指す安倍晋三首相は、3選となれば任期は2021年9月まで。「不動心」と胸の内を明らかにしている。