来夏から本格販売へ 若者や中高年に 養殖技術の伝授も
◇湖南・守山市
のど越しがやわらかく、あれよあれよという間に胃に収まった。さっぱりした味でありながら、ほのかな甘さだけはしっかりと口に残る。これは、守山市に住む田中健雄さん(71)が開発した全国でも珍しい養殖ホンモロコのなれずしである。ブラックバスのなれずしを開発した反骨のパイオニア、田中さんの挑戦はまだ終わらない。【石川政実】
田中さんは五月上旬に滋賀県内産の養殖のホンモロコ三百五十匹(約一・五キログラム)を塩漬けし、六月十二日にはご飯、塩、日本酒などを混ぜて飯漬けした。そして二週間後の二十六日、全国でも珍しい養殖ホンモロコのなれずし(写真)が完成した。
滋賀県では古くから、鮒ずしのほかにも、ウグイ、ハス、アユ、オイカワ、ホンモロコ、ドジョウなどを用いた数多くのなれずしが漬けられていた。しかし、天然ホンモロコの漁獲量が激減したことにより、モロコのなれずしは、すっかり姿を消した。それが今回、田中さんの手で復活した。
田中さんは、反骨のパイオニアである。県や県漁連が外来魚のブラックバスやブルーギルを害魚として一大駆除事業を展開しているときに、「大事な命をありがたくいただくべきだ」と平成十三年に個人企業「レイクフード工房」を立ち上げて、ブラックバスとブルーギルのなれずしの商品を開発。
「道の駅草津グリーンプラザからすま」において百グラム五百円で販売したところ、ものめずらしさも手伝って飛ぶように売れた。
しかし、これで満足する御仁ではない。次に目をつけたのが、高級料亭でしか食べられなくなった琵琶湖の固有種であるホンモロコや上等な鮒ずしに使われるニゴロブナだった。もっと簡単に庶民が口にすることができないか、そこで思いついたのが休耕田などを利用した陸上での養殖だった。
十六年十一月、滋賀県モロコ・フナ養殖研究会(田中会長、会員三十人)を設立し、自らも十七年に旧野洲川南流跡地の畑に手製の水槽(三十平方メートル)を設置。ホンモロコ、ニゴロブナの試験養殖に乗り出した。いまでは、ホンモロコが年間十五キログラム、ニゴロブナが同二十五キログラムまで、養殖できるようになった。
ホンモロコの調理法は、素焼き、煮物、天ぷら、から揚げ、佃煮が定番だが、伝統食品の復活を願う田中さんが選んだのは、なれずしだった。今回の試作品を改良し、来夏から販売に乗り出す予定だ。
「これからは、派遣切りやリストラで職を失った若者や中高年に養殖技術を伝え、地域おこしにも役立てたい」という。いかつい顔が笑うと、いつの間にか、いたずらっぽい子どもの目になっていた。






