過去そして未来をつなぐ宝物
◇東近江
東近江市田井町の住民が十一日、十年前に町内の草の根広場に埋設した「田井(タイ)ムカプセル」を掘り起こして開封し、過去と現在を結ぶ宝物との再会を果たした。
子どもからお年寄りまで笑顔で暮らせるまちを目指す田井町の世帯数は二十五軒。平成十三年三月、時の流れとともに変遷する文化・生活・風習を懐かしみながら良いものを後世へ伝えていこうと、まちづくり委員や自治会役員が中心となり、住民から募った二十一世紀に残したい原風景を紹介する「写真展」を地元公民館で開いた。
この第二弾企画が“田井(タイ)ムカプセル”。いつの時代も悩み・心配事は尽きないものの、ずっと続いてほしいと願う今の幸せな気持ちや将来像など、各世帯ごとに大切な品・写真・手紙に思いを刻み、塩ビパイプ(直径約二十センチ、長さ一メートル)三本に詰め込んで、翌十四年二月三日に草の根広場の土中深くに埋設。
約束通り十年後の今年二月五日に掘り起こし、十一日に待ちに待った開封作業を行った。水が入らないよう接着しておいたパイプの先端部分をのこぎりで切り落とし、娘のお腹の中にいた孫へあてた手紙や“守りたい家族のきずな 伝えたい地域の伝統”と題して各行事の写真を張り付けた模造紙、当時の重大ニュースが分かる新聞などを入れた密封袋を取り出した。
「これは宝や」とつぶやきながら、一人じっと手紙を読む佐川安平さん(84)。二年前にがんで亡くなった娘・玉江さんが、家族そして我が子にあてた手紙の末文は「二人きりの兄妹なんだから、仲良く助け合って生きていってほしい」と結ばれていた。開封するまで中身を知らなかった佐川さんは「まるで遺言のようや」と語り、教員としての復職を目標に闘病中も弱音を吐かなかった在りし日の姿を思い出し、ぐっと涙をこらえていた。
当時まちづくり委員長を務めていた佐川功さん(69)は、「大事な手紙を預かっていたので、水だけが心配だった。みんなで楽しみにしていただけに感動も大きい。これからは高齢者も生きがいや趣味を持ち、自分の感性を磨き続けられるような地域づくりができれば」と、過去から未来を見つめる。
また、田井ムカプセルの物品は、三月四日から十一日まで、田井町の公民館で展示される。開館時間は午前十時から午後三時まで。








