仏教美術、庶民信仰の両面で高い価値
◇大津
大津市教育委員会は、南北朝時代の作品と伝わる「絹本着色日吉山王垂迹神曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくひえさんのうすいじゃくしんまんだらず)」(同市坂本二丁目)など曼荼羅図(絵画)四件を新たに市指定文化財に指定した。
市指定文化財の件数は合計百二十八件で、世界遺産、国指定、県指定を含めると合計五百二十三件。
市指定文化財となった曼荼羅図四件は、延暦寺と結びついた山門公人の系譜を引く限られた家々で構成される山王講において、現在も本尊として懸けられている。
描かれているのは日吉社(日吉大社)の神々で、仏の姿で表す本地仏曼荼羅図(ほんじぶつまんだらず)と、神の姿で表す垂迹神曼荼羅図(すいじゃくしんまんだらず)。
いずれも織田信長の山門焼き討ち以前の制作で、作品自体の価値に加え、古くから山王講の講員の間をまわって懸けられてきたという、庶民信仰から見た価値も高い。
このうち坂本山王講・蔵之辻伴(同市坂本二丁目ほか)蔵の「絹本著色日吉山王垂迹曼荼羅図(けんぽんちゃくしょくひえさんのうすいじゃくしんまんだらず)」(南北朝時代)=写真=は、社殿内陣に日吉社の上七社の垂迹神を描き、大床(縁)に赤山明神・早尾・大行事の三神を描く。
内陣の七尊は御輿の屋根のようなものが付いた三曲の後屏(こうびょう)を持ち、中でも中段中央の大宮の装飾は細かい。社殿全体を奥行きのある空間として立体的に表現するため、十尊のうち六尊が内側を向き、最上部の押障子が台形に開いて配置され、両側には社殿の柱を描いている。
裏面に宝永六年(一七〇九年)の寄進と修理の経緯が記される。南北朝時代(十四世紀)の制作と思われ、出来映えと保存状態もよく、独創的な表現や情報をもっている点でも価値が高い。
このほか、坂本山王講・悪王子伴(あしおうじばん、大津市坂本一丁目ほか)に伝わる「絹本着色日吉山王本地仏曼荼羅図」(室町時代)は、顔料のはげ落ちが進んでいるが、各尊の像容は形式化がみられず、配置と社殿内空間のバランスもよい。
坂本山王講・早尾伴(同市坂本三丁目)が所蔵する「絹本著色日吉山王本地仏曼荼羅図」(南北朝時代)は、画絹が細かく上質で、尊像は丸顔で優しい微笑を浮かべる。
坂本山王講・生源寺伴(同市坂本二丁目ほか)所蔵の「日吉山王垂迹神曼荼羅図」(室町時代)は、上半分に上七社、下半分に残り十六社を描くところから、下部分ではかなり小さくなっている。







