新春特集 誌上美術館
◇湖南・甲賀
福祉施設での先駆的な造形活動により国内外で高い評価を得ている、滋賀県のアール・ブリュットが、県立新生美術館(平成三十~三十一年度オープン予定)の目玉展示の一つに掲げられている。そこで、新春特集として県内の主な作者を紹介する。
アール・ブリュットとは、フランス語で「加工されていない、生(なま、き)のままの芸術」を意味し、伝統や流行に左右されずに、自身の内側から湧きあがる衝動のままの芸術を指す。担い手の多くが知的障害をもつ人である。
県内施設でのやきもの制作は、昭和二十年代初めから取り組む近江学園(湖南市)をはじめ、多くの施設が「土による自己表現」の一環として取り入れ、成果を残してきた。これは、日本を代表する窯業地である信楽が県内にあることが影響している。
初期の取り組みから約六十年が経過した現在、県内では常設展示のボーダレス・アートミュージアムNО―МA(近江八幡市)の開館、施設や自治体の企画展などが開催され、アール・ブリュットを取り巻く環境も認知度も大きく様変わりしている。
主な作者の作風【注】をみると、
伊藤喜彦氏(一九三四~二〇〇五)は初期の頃から目玉状の大量の突起物の集合体で表現し、後年になって鮮やかな釉薬で色づけるようになった。不気味なほどの迫力と、妙な可笑しみが特徴だ。
滋賀俊彦氏(一九五八~二○一三)は、描かれている人間が誰なのか分からないが、常に人間を描いた。「テキトー」な感じの描線が、えも言われぬニュアンスをかもしだしている。
畑名祐孝氏(一九七六~)は、イメージを形づくる太い黒のラインと、カラフルに塗り込んだ大胆な色面とが織りなす力強さ、そして生き生きとしたユーモラスなニュアンスが魅力的な作品を生み出す。
澤田真一氏(一九八二~)は、少女のようなしなやかな長い指で、一つ一つ小さな棘(とげ)をゆっくり植え付けていく。多くの人を魅了するこの不思議な造形は、何かのイメージを追っているのか、それとも直観的な思いつきなのか不明だ。
荻野トヨ氏(一九三八年~)は、刺繍作品を好む。描いた下絵からどんどん変化し、自由な縫いの世界へ没入していく。縫い線は自由にうねり、ゆっくりと一針一針不思議な線をつくる。
西川智之氏(一九七四~)の粘土造形作品は、小さな一つのモチーフを繰り返し増殖密集させてゆき、一つの大きな集合体を形作るのが特徴となっている。「帆船」を形成するのは、小さな水兵さんたちの集合体だ。
【注】ボーダレス・アートミュージアムNО―МAの企画展図録「ひそむ形 とけ出る色」中のアートディレクター、はたよしこ氏の解説より抜粋。
【注】ボーダレス・アートミュージアムNО―МAの企画展図録「ひそむ形 とけ出る色」中のアートディレクター、はたよしこ氏の解説より抜粋。












