成安造形大附属近江学研究所
◇大津
成安造形大学附属近江学研究所(大津市)はこのほど、日吉大社所蔵の長沢芦雪筆「猿図」絵馬の復元模写を完成させた。同大学教授で同研究所研究員の吉村俊昭氏の作図指導するグループが、昨年七月から今年四月まで制作にあたった。
江戸後期の京都の画家、芦雪(一七五四~九九年)は、写実的な作風で知られる円山応挙の弟子で、師の様式に基づきながらも、動きのある、意表をついた奇抜な作風で知られる。現存する作品の中で名高いのは、和歌山県の無量寺、成就寺、草堂寺の襖絵。また、作品の特徴として、子どもや動物の親子を描いたものが多い。これは、芦雪の子ども四人がいずれも夭逝するなど、家庭運の薄かったことが作品に影を落としていると考えられている。
今回、同研究所が成安大学美術領域日本画コースとともに、復元模写に成功した「猿図」は、寛政四年(一七九二)に描かれた作品で、芦雪作品の年代を分ける指標として重視されてきた。
また、奉納者である藤井正脩は、広島城下一の呉服商「富士屋」の一族で、京都店の三代目主人である。このことから同作品は、芦雪が寛政六年に広島に下向し、多くの作例を当地に残すこととなるキーパーソンがこの藤井正脩であったことを伝える点で資料的価値が高い。
わずかな描画痕跡しか残っていない同作品を復元するのに際しては、和歌山県草堂寺の「群猿図」の筆使いを確認するなど、作者や奉納にかかわる資料収集と読み解きに多くの時間を費やした。
猿の絵は原画でかすかに見て取れる「耳」と手足指から親子猿の向きを決定して猿の全体像を想定したが、母猿の視線は習作を重ねて奉納目的から決定した。また、足元の草花は蘆雪作品の優しさを表現できるよう努めた。








