東近江市・山形 蓮さん(29)
《特集》
地方の人口減少や高齢化が急進する地域や旧市街地に住み込み、住民ともに活性化に取り組む「地域おこし協力隊」が、東近江地域でも七人(東近江三人、近江八幡市一人、日野町一人、竜王町二人)が活動している。
協力隊は、二〇〇九年に総務省が制度化し、全国各市町が地域外から隊員を募集し、最長三年を期限に委嘱している。
東近江二市二町には、どんな協力隊員が活動しているのか紹介します。
記事は、全て本人が執筆したもので、協力隊になった動機、地域での活動内容、地域活性化への思いなどが綴られています。
任期三年の協力隊員になったのが二〇一四年の春。まもなく、折り返し地点を迎える。「地域おこしって一体なんなんだろう」「協力隊にとってのゴールはどこにあるのだろう」そんな問いを繰り返すうちに過ぎていった一年半だった。
滋賀県立大学在学中から農山村でお年寄りから昔の暮らしの話を聞くのが好きだった。それは新興住宅地で核家族に育った自分にとって、未知の世界との出会いであり、「地域に生きる」という生き方に惹かれるきっかけだった。
その後、東日本大震災が起こり、学業そっちのけで約1年間、宮城の小さな漁村に通った。家も船も漁具もすべて流されてしまってもなお、長年培われてきた地域のつながりは決して流されない被災地の姿を目のあたりにし、自分もどこかの地域にしっかり足をつけて生きてみたいという思いがより強まったことが協力隊になるきっかけだった。
今、三重との県境にある東近江市奥永源寺地域で、政所茶をテーマに活動している。
政所茶は室町時代から六百年の歴史を誇り、「宇治は茶所、茶は政所」と茶摘み歌にうたわれ、全国に名の知れる銘茶だった。しかし、高度経済成長期の生業の変化や過疎高齢化による担い手不足によって、現在では「幻の銘茶」と呼ばれるほど生産量が減少している。
その政所茶を単なる商品として盛り上げるのではなく、代々守ってこられた地域の方の思いを自分たちの世代が引き継げるようにと思い、現在活動している。
茶畑での茶栽培、茶工場勤務、地域外のイベント出店、茶摘み体験など、イベントの企画と開催、パッケージデザイン、コラボ商品開発…できることは片っ端から挑戦した日々。その度に、政所茶にたくさんの可能性があることを実感してきた。けれども、茶業どころか農業初心者で奥永源寺初心者の私。政所茶という宝の山を目の前に、気持ちばかりが先走り身体がついていかず迷惑をかけたことも多々あった。
今、協力隊としての折り返し地点に立ち、任期後のことをよく考える。地域を活性化するなどという大きなゴールは正直まだ見えない。でも、協力隊という機会と、政所茶の可能性、それから何より、政所茶を通して出会えた地域の方々や一緒に活動する仲間、応援してくれる人たちとの、言うなれば「茶縁」が私に居場所を与えてくれたように思う。
その恩をゆっくりとでも返していくこと、自分の足でしっかりと奥永源寺に立つことが、私にとっての一つのゴールなのかもしれないと思う。
【プロフィール】
山形 蓮(やまがた れん)
29歳
京都府京都市生まれ、大津市育ち。
滋賀県立大学人間文化学部地域文化学科卒業






