大野県議の意を受け全農に契約見直し要請
【全県】 大野和三郎県議は先月25日に記者会見し、「県職員との面談中に何度か『ドアホ』と発言したのは不適切だった」と謝罪した。しかし県の予算を人質に取り「特定企業を切るよう全農に要請しろ」と県に迫ったのは「不当でない」と自己を正当化した。そこで大野県議の圧力で県行政がゆがめられたかを検証してみた。(石川政実)
●全農と大野氏の関係
大野県議が問題視するJA全農しがの食肉事業(図参照)を見てみよう。これまで全農しがから出荷された牛は、食肉市場でと畜解体された枝肉を全農が持ち帰り、全農栗東工場(栗東市)で堀川企業グループの滋賀県食品企業組合(滋賀県食品)が各部位に加工する一方、内臓は同グループの企業組合堀川食品(堀川食品)が一手に引き受けてきた。
また豚の枝肉の部位加工も、滋賀県食品が全農の下請けとなり、大野県議の親族が代表を務める(有)Y・M・Oが孫請けの関係にあったという。
ところが、滋賀県食品や堀川食品の代表を務めていた故・堀川眞智子氏が恐喝未遂(その後、脅迫未遂罪に変更)の容疑で逮捕され、全農の態度は一変する。
滋賀県食品に対し、20年3月、全農は契約を一方的に解除し、同年4月に滋賀県食品の従業員らが設立した(株)OSと業務委託契約を結ぶ。
堀川氏の逮捕後に、全農はそれまで孫請けだったY・M・Oを独断で下請けに格上げした。なお県内では現在、豚のと畜はほとんど行われていない。
この間、堀川氏は責任を取らされて、滋賀県食品、堀川食品など各代表を辞任。全農では堀川食品の代表が替わったことや、全農、食肉市場、堀川食品の3者でそれぞれ締結した契約があるため堀川食品との内臓取引は継続している。
●全農が震撼のメール
大野県議の意を受けて昨年11月9日、西川忠雄・県農政水産部長(当時)らは、竹村敬三・JA全農しが運営委員会会長らを訪ねて、「コンプライアンス上問題のある特定事業者との契約の見直し」を迫った。
県が2020年度のJAグループへの補助金(決算)一覧表を事前に全農しがに手渡していただけに、全農側は「県は関係にケジメをつけなければ補助金を止める気か」と不快感をあらわにした。
西川部長は「来年度予算とは関係ない」と釈明に追われた。
県に強い不信感を抱いた全農全国本部と全農県本部は今年1月11日付で、県に照会状を送りつけた。
本紙の既報(先月26日付)の通り、その照会状では、大野県議が全農全国本部の竹本尚史常務理事に送ったメールのコピーを添付し、「全農への県の要請は行政指導なのか」など約10項目の質問を行っていた。
メールのコピーは「全農の出荷分の内臓を堀川食品が引き受けて出荷している実態が続いているが、こうした実態への説明責任が果たされなければ、県補助金は新年度予算に計上されなくなる」といった内容だった。
県は2月1日、「全農に契約関係の見直しを要請したが、県の補助金とは関係なかった」などと回答した模様だ。
県職員「大野県議に怒鳴られ眠れぬ日々も」
●貶められた堀川食品
県に「コンプライアンス上、問題のある事業者」と事実上、名指しされた堀川食品は先月11日、「あたかも当組合が反社会的勢力のような前提で、全農しがに契約打ち切りを迫るのは、当組合の社会的信用を貶(おとし)める行為だ。また県が予算権限を背景に、民と民の問題に不当な介入を行った」との抗議文を宇野良彦・農政水産部長に送付した。
ちなみに堀川氏の脅迫未遂事件は、今年1月12日に大津地裁長浜支部で無罪が言い渡され、同26日に無罪が確定した。
ただ、堀川氏と滋賀県副生物組合職員は19年10月、長浜市営住宅の賃貸契約の虚偽申請の詐欺容疑で逮捕され、大津地裁長浜支部で有罪の判決が下りたため、両者は無実を主張し控訴中だったが、堀川氏が先月13日に死去。しかし同職員は堀川氏の遺志を継いで現在も控訴中だ。
堀川食品の長谷夏樹代表理事は「堀川氏の脅迫未遂事件は無罪となった。控訴中の詐欺事件も当組合の職務・業務と無関係であり、まだ刑も確定していない。堀川氏は代表を辞任しているのに、県が全農しがに『契約を打ち切れ』と迫るのは不当な行政介入だ」と憤る。
県は先月30日付で「堀川氏が脅迫未遂事件では無罪となったが、別件の詐欺事件では有罪判決が宣告され、また堀川食品の関係者にも強要未遂、脅迫の有罪判決が宣告されており、コンプライアンス上の問題は残る」と反論する。
長谷代表理事は「当組合の関係者に強要未遂、脅迫の有罪判決が宣告された事実はない」と、再抗議の構え。
ある県職員は「大野県議から控え室などに呼ばれて怒鳴られると夜も眠れない日々が続いた。もっと行政組織全体で職員を守ることが必要だ」と訴えていた。








