「さよなら」は言わない島文化
小笠原諸島最大の父島は、面積23・45平方キロメートル。旧八日市市の面積(52・6平方キロメートル)の半分ほどの広さで、火山島のため平地が少なく、そのほとんどは山間部で占められている。
まちの機能は島の玄関口である二見港周辺に集中し、国や東京都の行政機関が配置されている。中心部にメインストリートが通り、その沿道に観光施設や店舗が並んでいる。
島内は、ゆったりとした南の島特有の時間の流れを感じる印象は薄い。内地からの移住者が多く、ケーブルネットワークの構築により全戸で在京テレビ局がリアルタイムで映り、インターネットや携帯電話も内地と同じように使える。島の生活に不便を感じることはなく、内地と同じ感覚の日常を過ごすことができる。
ネット通販で大型定期船「おがさわら丸」の東京出港日にあわせて商品を購入すれば2~3日後には手元に届く。ただ、困るのは家電が突然、故障した時だという。島内での修理は難しいため、毎日の生活に欠かせない冷蔵庫や洗濯機は2台備えている家庭も珍しくない。
一番の心配は、病院施設がないため、急病時の対応である。命に関わるような重篤な病気やけがを負った場合は、自衛隊の飛行機で東京まで搬送される。
コロナ禍の収束が進んだことで島の観光客は、以前のような賑わいを取り戻しつつある。来島者のピークは、正月、5月の大型連休、夏休みで帰省者も集中する。
印象的なのは、小笠原で「さよなら」という言葉を聞くことはなかったことである。島を離れる(出る)時は「行ってらっしゃい」、戻ってくる時は「お帰り」のあいさつが交わされる。それは観光客に対しても同じ。船が二見港に入港する時は、海に張り出した突堤の先から「お帰り」の大声が聞こえるし、出港の時は、航行の安全を祈る和太鼓の演奏で見送られ、船がゆっくり岸壁を離れ出すと海上保安庁の警備艇を先頭に小型の観光船が連なって併走し、その船上から両手を力いっぱい振りながら「行ってらっしゃい」の連呼が聞こえる。見送りが終わるころ、併走する各船の甲板から次々と人が海に飛び込み、別れを惜しむ感動的なシーンが繰り広げられる。このおもてなしに誰もが「来て良かった、また来たい」と思いを募らせる。
世界自然遺産の小笠原の魅力は、なんといっても人の手が入っていない大自然である。遺産を守るための規制は、動植物やその生存環境におよび、島内でのキャンプや公園でのテントも制限されている。
また、アオウミガメやクジラウォッチング、ダイビング、フィッシングなどが楽しめる美しい海は、最大の魅力でもある。
今回の旅行では、小笠原の歴史に深く関わる3人の探検家の足跡を辿った。現地を訪れた一番の成果は、日本人よりも先に外国人が移住しても日本の領土として認められ、争奪が起こらなかった時代背景と島の歴史に見識が深められた。また、島の地域情報と島民の暮らしなどにも見聞が広められたことは有意義だった。








