ユネスコ「世界の記憶」に登録決定
【大津】 三井寺の名称でも知られる天台寺門宗総本山園城寺(大津市園城寺町)と東京国立博物館(東京都)が所有する「智証大師円珍関係文書典籍」が5月24日、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)による「世界の記憶」に「―日本・中国の文化交流史―」として登録されることが決定した。
「世界の記憶」とは、世界的に重要な文書・絵画など記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進することを目的とし、ユネスコが1992年に開始した事業の総称。その代表的なものとして、人類史に特に重要な記録物を国際的に登録する制度が95年から実施されており、建造物や自然が対象となる「世界遺産」、習慣・伝統・儀式などを対象とした「世界無形文化遺産」と並び、ユネスコが力を込める保存事業の一つとなっている。
国内では、筑豊炭坑(福岡県)の記録「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」が2011年に初めて認定されて以降、今回の登録を含めて9件が登録されており、県内からは、17年に登録された「朝鮮通信使に関する資料」に続いて2件目となる。
今回、平安時代の高僧で天台寺門宗の宗祖「智証大師 円珍」(814~891)が残した国宝「智証大師関係文書典籍」46件、国宝「五部心観」1件、国宝「円珍関係文書」8件、国宝「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」1件の合計56件が「世界の記憶」へ新規登録が決定した。
円珍は853年に唐の国へ渡り、5年間かけて天台学や密教の研究に励んだ。帰国後、園城寺を再興したほか、78歳で亡くなるまで仏法の隆盛に尽力したとされる。
円珍が唐の国に留学した際の史料のうち、特に、今回の登録にも含まれている「過所(かしょ)」の原本は、円珍が唐の国の役所から交付された通行許可書であり、唐の国の法制度を示す貴重な文書であることに加え、良好な状態で現代まで保存されている世界唯一の事例でもあり、世界史的なアーカイブの観点からも高く評価されている。
今回の登録決定を受け、記者会見を開いた園城寺長吏の福家俊彦氏は「戦乱や困難の歴史を乗り越え、1000年以上伝えられてきた資料が世界にも認められ、大変名誉なことで喜んでいる」とし、「この登録を機に、日本の歴史の中核となる仏教文化への認識が深まることと、世界平和や交流に貢献できるように努めていきたい」と語った。
また、登録について、三日月大造知事は「県民に広く知られることで国際友好や文化交流の歴史が未来へ伝えられるとともに、地域の文化や観光の振興に一層貢献していくものと期待している」、大津市の佐藤健司市長は「市民の大きな誇りであり、文化財の保護や継承に携わる方々の活動に大きな励みになる」とコメントを出した。
今回の登録を記念し、「過所」など登録される文書5点が7月2日まで園城寺文化財収蔵庫で展示されている。観覧には入山料(大人1000円、中高生300円、小学生200円)と別に拝観料300円が必要。また駐車料金は500円。
さらに、園城寺での展示後の7月4日~30日まで、大津市歴史博物館(同市御陵町)でも登録文化財の一部展示公開のほか、県と県立琵琶湖文化館による文化講座「花湖さんの打出のコヅチ」で7月27日午後2時~、コラボしが21(同市打出浜)で福家長吏を講師に招いた特別講座「智証大師円珍の足跡と『世界の記憶』(仮題)」の開講も予定している。同文化講座の参加予約などについては今後、同文化館ホームページ(http://www.biwakobunkakan.jp/)などで告知される。






