國松善次元知事が語る「地方行政と地方メディア」
【全県】 これからの地方メディアはどうあるべきか――。元滋賀県知事の國松善次氏(86)に話を聞いた。(聞き手・羽原仁志)
行政とマスメディア
僕は知事の前に県の広報課長を経験し、その時から、行政はマスコミの力を借りないと十分県民に伝えたいことを伝えられないという体質を持っている。ただ、県内に本社を置き、県域全体を対象とする新聞が滋賀県にないのは辛いなあと思っていました。
行政にとって広報というのは非常に大切です。しかし、県が作っている広報誌はなかなか読まれない。それはなぜかと考えると、知りたい情報を得るために購入する新聞や雑誌とは違い、県からの一方的な情報が載っている無料の広報誌は手に取って読まれにくいらしい。ある人が言うには、身近な生活に直結している話がいっぱい出てきている市町村の広報誌は読まれるそうです。その点、県の広報誌は市町村の広報誌ほど生活に直結していないと感じられているのかもしれません。しかし、そんなことはありません。そこで情報発信には地方メディアの力が重要になってきます。
ところが、県庁職員はメディアを通じた情報発信の訓練を受けていない。良いことを書いてもらうこともあるけれど、叱られることも多々ありますからね。身構えて、距離を置くことをややもすると考えがちだった。
そんな時、滋賀報知新聞社を創業した深田(正治)さんが連日のように広報課に来られ、いろいろお話しする機会があり、その中で多くのことを教えてもらいました。
解決策は現場にある
47都道府県の中で、その自治体を中心にしている報道機関、特にペーパーがないのは滋賀県ぐらいだそうです。同程度の人口規模の沖縄県には複数紙ある。それはなぜかというと、オールジャパンの話題がいっぱいあるから。滋賀県にもそういった話題はあるのだけれど。
知事になったとき、僕は職員に「県行政は住民サービス業だ。しかも、(税金として)お金を先にもらっている中で住民サービスをするのだから、県政は県民の暮らしが原点だ。課題と解決策は常に県民が暮らす現場にあるから、現場をよく見て考えてほしい」と話してきました。だから、地方紙が滋賀県という現場に焦点を当てて報道していることがあるのとないのとでは、大きな差があります。
県の地方メディアへ
全国記事より地元の記事を読む県民は多いでしょう。地方紙というのはそのエリアを主たる購読者にし、また、その購読者のためにそこにスポットを当てた報道をするわけですね。滋賀県をメインエリアにするペーパー、報道機関があると、もちろん県の代弁者としてだけでなく、県に対する批判も含め、やっぱりきちっと報道していただける機関があるということは非常にありがたい話なんです。
滋賀県を良くするため、滋賀県の自治を全うするためには、その地域にマスメディアがなければなりません。メディアは行政と住民の間に地域の絆をつくります。絆のある地域とは温かみや潤いがあるということ。このためにも、地域を主とする地方メディアには自信と誇りを持って頑張ってほしいですね。







