嘉田由紀子参院議員にインタビュー
【全県】 婚姻中の父母に認められている「共同親権」を離婚後も父母が協議で合意すれば可能になる改正民法が先月17日、参院本会議で可決、成立した。2019年7月に参院議員に当選してから、ずっと共同親権を訴えてきた“教育無償化を実現する会”副代表の嘉田由紀子さん(74)に今後の課題などを聞いてみた。(石川政実)
見直し必要な「共同親権」
共同養育計画促進を目指す
―まず嘉田さんが知事時代(06年7月~14年7月)に取り組んだ政策から伺いたい。
嘉田 取り組んだのは(1)少子化対策(人口減少問題)(2)必要性の低い公共工事(ダム、新幹線栗東新駅設など)の見直し(3)県民の命を守る流域治水の推進―です。少子化対策では、女性が仕事か子育てかの二者択一の選択を迫られることがないように両立を目指す施策に注力しました。
女性の有業率(労働参加率)と出生率が高いのはスウェーデン、ノルウェー、フィンランドの北欧3国、仏、イギリス、デンマークなどで、女性が子どもを生んでも正規雇用で戻る場所があります。
ところが日本や韓国では、子どもを生んだら専業主婦になれという風潮があり、子どもが大きくなって仕事に戻る場所はパートなどしかない。二者択一を迫られる女性は、子どもを生めない、生まない。これが人口減少の女性側の理由です。男性側の理由は、非正規雇用で安定した仕事がなく、安定した収入がないからです。
そこで女性が二者択一を迫られないために、仕事と家庭を両立できるようにワンストップサービス「マザーズジョブステーション」を近江八幡市と草津市につくりました。
もう一つは非正規の若者を正規雇用にするため、草津駅前に「若者未来サポートセンター」を開設し、毎年100人近くが非正規から正規雇用に替わりました。
知事時代に心を痛めたのは、子どもの貧困問題でした。「子どもの貧困率」は、平均的な所得の半分に満たない所得しかない家庭で暮らす18歳未満の割合を示しているが、15年時点で13・9%と7人のうち1人の割合となっている。なかでも母子世帯の貧困は深刻です。
日本の子どもの貧困問題の背景には、18歳以下の子どもがいる夫婦が離婚した場合、これまでは片親だけしか親権が取れなかった「単独親権」の問題があります。離婚した場合、9割以上は母親が「単独親権」を取っていますが、親権のない父親は約4分の1しか養育費を払っていません。非正規雇用が多い母子世帯の母親の収入不足に加えて、父親の責任放棄が子どもの貧困の大きな要因です。
―このため参院議員になって真っ先に取り組んだのが「共同親権」を目指した民法改正だったんですね。
嘉田 「単独親権」は、先進国では日本だけです。韓国、台湾、中国も全部、共同親権です。日本は明治民法以来130年間、ずっと「単独親権」でした。今回の改正民法の成立で、離婚後も父母が協議によって「共同親権」を選べるようになったのは、一歩前進でしょう。しかし実は中身はスカスカです。
「魂がない国の流域治水」
この法律では、子どものために離婚する父母が協議して「共同養育計画」をつくるべきことに一言も触れていません。これでは裁判官がやりたいように決められることになります。だから法案には賛成しましたが、共同養育計画を促進するといった附帯決議を与党に認めさせました。離婚の際、行政の窓口で、父母が子どもの養育費をはじめ、進学といった重要事項説明書も含んだ「共同養育計画」をつくって提出することを促進して、それを予算化すべきだと。
また最近、国土交通省は滋賀県をモデルにした「流域治水の推進」を言い出していますが、「共同親権」と同様に、これも形だけです。
知事時代の11年、ダムだけに頼らない治水政策として、一級河川、中小河川、農業用水、下水道などすべての水源を把握しながら、治水の施設ごとの安全基準や土地の高低なども重ね合わせて、水害リスクを表した「地先の安全度マップ」を公表しました。これをベースにして14年3月、日本で最初の土地利用規制や建物規制を含む「滋賀県流域治水推進条例」の成立にこぎつけました。
国交省も20年、滋賀県をモデルにした「流域治水の推進」を打ち出しましたが、住民参加で流域治水をやれているところは全国でもほとんどありません。逆に同省は、熊本県を流れる一級河川球磨川水系の上流に建設を計画していた川辺川ダムを最近復活させています。「流域治水」も「共同親権」も、形だけで魂が入っていません。19年に参院議員になりましたが、まだまだ道半ばです。なんとか子ども政策と流域政策は完成させたいとの思いが募るばかりです。







