ムーミンパパ・武村正義元財務大臣に聞く=
◇全県 石川 今年も終りが近づいてきました。さまざまな課題がひしめいていますが、今日はアメリカにしぼってお伺いします。とうとうオバマはやりましたね。 武村 堂々と勝ちました。アメリカの大統領選挙は長丁場だから大変ですね。民主党の予備選を含めると一年間。体力も気力も要ります。それにしても四十七歳の黒人候補オバマの勝利は画期的ですね。 石川 今度の選挙の特徴をどうみますか。 武村 三つあります。一つはアメリカの大衆がアメリカの現状に強い危機意識をもっていて、その現状を「変える」選択をしたことです。世論調査では「アメリカは悪い方向に向っている」と、答える人が八○%を超えました。結局は八年間の共和党のブッシュ政権に、アメリカ人はNO!をつきつけたのです。イラク戦争と金融にはじまった経済危機ですね。 もう一つは、少数派の黒人を選択したことです。政党や人種や肌の色の違いをのりこえて、アメリカは一つになるとオバマが訴えたことが幅広く共感を得ました。それを支持した有権者も偉いですね。 三つ目は、アメリカの民主主義は健全だということです。文字どおり草の根的な応援で選挙戦が進められました。最終場面で、大勢の人々が全米各地で電話による応援活動をしていましたが、みんなボランティアで無料奉仕です。しかも長い行列をつくって電話があくのを待っている姿には感動しました。 また選挙資金も五ドル(五百円)、十ドル(千円)の小口カンパが集って大きな資金になっているのもびっくりしました。まさに「自分たちで、自分たちのために、自分たちの代表を選ぶんだ」というアメリカの民主主義をまのあたりにみせつけられました。日本からみるとうらやましい限りです。 石川 これでイラク戦争はどうなっていきますか。 武村 多くのアメリカ人はイラク戦争は間違っていたと思っているようです。ブッシュ大統領が国連の正式決議も経ないで、一国で強引に始めた戦争だという見方が大勢です。日本の小泉首相が、ブッシュがイラク攻撃を始めた時に「全面的に支持します」といったのが、今になってみると恥ずかしいですね。 石川 ニューヨークから始まった金融危機は大変ですね。 武村 大変どころではありませんね。世界中をどん底に落とし入れることになるかもしれません。最近のアメリカは物づくりを忘れて、もっぱら金融の世界にどっぷり浸っていました。全世界の実体経済(GDP)の十倍以上の巨大で複雑な金融の王国をつくりあげてあぐらをかいていたのです。レーガン大統領以来の共和党政治の新しい資本主義の考え方(新自由主義)が壁にぶつかった。「小さな政府」で、経済のことは「市場」にまかせておけばよいという考え方が支配的でした。規制緩和もどんどんやりました。 これをいいことにして、サブプライムローンという低所得者に対する住宅ローンが拡げられ、これが地価の下落でがたがたになってきたのです。そこへ、いわゆる金融工学を駆使してさまざまな債権をごちゃまぜにした金融商品を全世界に売りだして、結果的には金融マンもよくわからない巨大なお化けの世界をつくりあげてしまった。それがバブルではじけとんだのです。金融の失敗だけで終ればよかったのですが、実体経済にも影響はおよんでくるからたいへんです。 石川 日本にも影響がでてきますね。 武村 そうです。アメリカも自動車をはじめメーカーやサービス業にもすさまじい悪影響がでてくるでしょうし、日本もこの影響は避けられません。政治が金がないのにバラまき競争をしている時ではありませんね。世界経済の深刻な正念場が刻々と近づいてきていると思います。(聞き手・石川政美)






