自分の道を切り開く 今夏、五個荘平坂町に工房
◇東近江
東近江市八日市東浜町出身で、現在、長野県で修行を続ける北川哲士さん(30)が、この夏、同市五個荘平坂町に工房を構え、現代刀匠作家として独り立ちする。
北川さんは、大阪芸術大学で写真を専攻し、プロカメラマンを目指していたが、刀鍛冶のテレビ番組を観たのがきっかけで、興味を持つようになり、卒業と当時に刀の世界に。父親の知人を通して現在の師匠・宮入法廣氏に弟子入りした。
宮入師匠から「一週間やってみて、続けられるか考えて決めたらいい」と言われ、自分でも半信半疑で入門した。
「最初は、もっと作業ができると思っていたんです。でも実際は出来なかったです。師匠が十五分~二十分で仕上げる作業を私は、一~二時間もかかってしまい、うまく出来なかった。イメージばかりが膨らんでいた」と弟子入り当初を振り返る。
「やってもやっても作業時間は、縮まらないし、技能もなかなか上達しなかった。やっていく自信をつけるというより、やるしかないと思っていました。この仕事は悩んでいてはできない」と気づいたという。
全国で刀鍛冶と言われる職人は、三百~四百人ぐらい。そのうち刀の仕事だけで生活できている人は、およそ一割。鉈(なた)や包丁を作ったり、週末だけ鍛冶をしたりする人や結局、辞めていく人も少なくない厳しい世界だ。
「途中で出来ないんじゃないかなあと思ったら到底出来るものではありません。出来るまでやるしかないという自己鍛錬の世界でもあります」と作業中は精神力が試される。
「修行を積んでくると技能に応じて、上の仕事を任されるようになるんですが、一つ失敗すると作品はお釈迦になる。この仕事の基本は技術です。どれだけ自分のものにできるか。上達するまでに余りにも長い我慢の時間が続きます。心が折れそうになる時もあります。でも、自分がやれるまで、技を覚えるしかないんです」と語る。
弟子入りして八年間の努力の甲斐あって、昨年初めて出品した刀が、新作名刀展(財・日本美術刀剣保存協会)の新人賞と優秀賞を獲得した。
「今、私が目指しているのは、鎌倉時代に岡山県で造られていた『備前刀』です。現代刀匠が造っても、同じ物は難しい。それには技が秘められています。製法の資料は、なにも残っていません。当時の刀だけがあるだけです」。
「名匠といわれる人の刀には、古刀の魅力があります。刃の姿、地金、波紋など」と刀の魅力を語る。
「一人立ちすれば、師匠が居なくなるので、自分の基準を自分でつくり、高めていかなくてはなりません。さらに技を伸ばし、作品展で無鑑査になる品のある刀を目指したいと思います」と目瞳が輝く。








