広がる多剤耐性菌の院内感染
社会保険滋賀病院の井上氏「地域全体で感染制御を」
県立成人病センターの鈴木氏「5年、10年先見た対策に」
◇全県
多くの抗菌薬が効かない多剤耐性菌。帝京大病院(東京都)での多剤耐性アシネトバクター菌(注1)による院内感染が発覚、さらに独協医大病院(栃木県)では国内初のNDM1(注2)遺伝子を持つ大腸菌が検出された。このため県では、各保健所を通じて県内約六十病院に対し、多剤耐性菌の院内感染防止対策の聞き取り調査を実施して医療監視を強化していく方針だ。 【石川政実】
厚生労働省は十日、意見交換会を開き、同省研究班が多剤耐性アシネトバクター菌について、今春実施した全国の主要病院のアンケート(表参照)で、回答した七百七十一施設の一二%に当たる九十二施設で検出したことが分かった。このため、十五日から十二月二十八日まで、国内の多剤耐性菌の院内感染実態調査を実施することを決めた。
●県、耐性菌発生なし
県医務薬務課によると、昨年、保健所に報告があった県内の院内感染は、急性胃腸炎を引き起こすノロウイルスによるものが一病院(患者二十二人)で出たものの、多剤耐性菌は発生していないという。 しかし今回の事態を重く受け止め、八月末から各保健所が県内病院の医療監視を行っているが、今月から多剤耐性菌対策の聞き取り調査を実施していく。
また県は平成十五年から、医療関係者による「県感染制御ネットワーク運営委員会」を設置しているが、同委員会の成果にも期待を寄せている。
●病院間で感染広がる
同委員の社会保険滋賀病院(大津市)の井上徹也・感染制御部・血液内科・検査部部長は「一つの病院だけで院内感染を考えるのではなく、当委員会では各施設の取り組みの情報を共有している。東京都健康長寿医療センターが多剤耐性緑膿(りょくのう)菌を検出し死者まで出したが、患者が他の病院から転院しており、病院間で感染が広がったとみられている。今月から院内感染は、地域全体で感染制御をすることが大事だ」と指摘する。
大津日赤(大津)では「アウトブレーク(発生)を広げないために、手洗いの厳守など予防対策の事例をまとめた文書をこのほど、職員に配布したばかり」と話していた。
●生物界からのしっぺ返し
県立成人病センター(守山市)の鈴木孝世・副医院長は「今回の事態は大きな危機だ。人間の文明に対する生物界からのしっぺ返しともいえる。当病院では、感染管理室を中心に院内感染防止に取り組んでいるが、初心に返って細菌検査室の情報発信も強化していく。いまは東京など関東地方の騒ぎだが、やがては全国に広がる。五年、十年先を見て感染対策を行うべき」と語った。
(注1)多剤耐性アシネトバクター菌=土壌や水系など自然界に広く存在する細菌。重病などで免疫力が低下した場合、肺炎や敗血症で死にいたることがある。
(注2)NDM1=酵素の遺伝子を持つ細菌で、ほとんどの抗菌薬がきかない。今回の新型耐性菌は、大腸菌が変化したもので、多くの人に広がる可能性がある。






