衆議院議員 武藤 貴也
前回私は「治水には河川によって様々な事情があり“脱ダム宣言”や“流域治水”のようにダムを否定し、治水政策を一括りにすることは困難である」と述べたが、今回はその具体的な例を挙げたい。
ご存知の通り琵琶湖に流入する一級河川は121本もあるのに対し、流出河川は瀬田川1本のみである。京都で宇治川、大阪で淀川となり大阪湾に注ぐこの大河は、歴史的に上下流の対立を生んできた。なぜなら瀬田川やそこに注ぐ河川を溢れないように整備すると、下流の水量が増し今度は宇治川・淀川流域で洪水を引き起こしてしまうからだ。そのため、滋賀県は瀬田川を全閉し河川整備を控えることにより、京都や大阪の住民を守ってきた。今回洪水を引き起こした大戸川も瀬田川に注ぐ河川の一つである。
しかしいつまでも滋賀県が犠牲となるわけにはいかない。そこで大阪・京都と話し合い「上流にダムを」という構想が持ち上がってきたのである。そうすれば上下流の対立は回避され、滋賀県としても国・大阪・京都の予算で治水ができ、なおかつ瀬田川洗堰全閉を抑制できるため、この大戸川ダム建設は必要な計画であったのだ。更に言えば「水源地域対策特別措置法」により周辺整備予算が付く。生活道路である大津-信楽線の整備や下水道整備にこの予算が充てられる予定であった。にもかかわらず、嘉田知事誕生により安易に凍結されてしまったのはご承知の通りだ。
ダムは上流にあるため都市部の人の関心は薄い。まして水系全体の治水対策が長い年月をかけ議論されていることも一般的に知られているとは言い難い。その中で「公共事業悪玉論」を背景に、ダムは利権の巣窟で無駄遣いの象徴であるかのように訴え、混乱を巻き起こしているのが現状だと私は考えている。勿論、前編で触れたように利権構造の問題等、様々な課題はある。しかしながら、少なくとも私達政治家は世論や人気取りに左右されず明確な根拠に基づく治水政策を策定していかなければならない。






