衆議院議員 武藤 貴也
昨年11月、中国が尖閣を含む空域に「防空識別圏」を設定した。これは各国独自で設定しているものだが、通常、周辺国に配慮し事前折衝や協議がある。しかしこれらは実施されず、その上、日本・韓国・台湾の領域と重複して設定された。まさに中国による挑発と言える。
この背景には、中国国民の不満を外に向けるしかない国内事情がある。中国は未だ選挙をやらない、事実上共産党一党独裁の国である。民衆の不満は、民主主義国家ではない以上、はけ口が無い。共産主義をとうの昔に捨ててしまった共産党は、ここ数年間、経済成長こそがその存在意義であった。しかしここにきて経済成長をも陰りを見せ始めた。経済成長の止まった政府の存在意義は、外に敵を作りそれに対抗し国民を守る「強い政府」を演じるしかない。そこで隣国日本を批判の対象としてナショナリズムを煽り、求心力を保とうとしているのが現状だと言える。
一方、米国は結論から言えば、中国とは対立したくない、経済的・軍事的にも対立する余力が無いのが現状だ。オバマ大統領の関心事は「オバマ・ケアー」と呼ばれる医療・福祉制度充実を中心とした内政であり、決して「世界の警察」などではない。その証拠に昨年9月の演説では「米国は世界の警察官ではありません」と断言している。
「中国の台頭」と「米国の低迷」が従来の国際秩序を変質させている。つまり、中国が「防空識別圏」を設定したことは米国の抑止力が極東アジアにおいて効かなくなってきているということを意味している。
では日本はどうすべきか。当然日米安保を基軸とする「米国頼みの体制」から「自主防衛体制」へと変換しなければならない。「米国頼み」が通用しなくなってきているからである。しかし国内を見ると、集団的自衛権の行使さえ検討中の段階である。それでも少しずつでも安全保障体制の切り替えをしなければならない。昨年のNSC設置も、特定秘密保護法の制定も、ただただ「知る権利の侵害」等の一方的側面だけでなく、このような国際秩序の変化という文脈で行われていることを私達は改めて認識し、日本の安全保障に対する本質的議論を進めなければならない。






