衆議院議員 武藤 貴也
5月にストックホルムで開かれた日朝外務省局長級協議で、北朝鮮は全ての拉致被害者に関し再調査を行うことを約束した。政府認定拉致被害者だけではなく、拉致の疑いが否定できない『特定失踪者』約700人も対象に含め、これまでにない規模で行われる。それだけに期待も大きい。
確かに、停滞していた拉致問題が動き始めたことは事実で、安倍政権の外交成果が出始めたとも考えられる。しかし、なぜ今になり北朝鮮が再度交渉に乗ってきたのであろうか。
福田~麻生政権、民主党政権が不安定で短命との見方が強く、また日本側の外交土台がしっかりしていなかったことで停滞したことは事実で、その反面、安倍総理が長期政権になると分析されていることは、北朝鮮が交渉再開した理由であろう。
しかし、私はそれよりも過去の経済制裁が効いてきたことが大きな理由だと分析する。つまり、万景峰号などによるヒト・モノ・カネの往来が停止、とりわけ「在日マネー」と言われる大きな資金の流れが止まったことにより、金体制の維持が困難になってきたことが、交渉再開に至らしめた理由と考える。
そう見ると、今回の「合意文書」の問題点が浮かび上がってくる。『第2に、北朝鮮側が包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、人的往来の規制措置、送金報告および携帯輸出届け出の金額に関して北朝鮮に対して講じている特別な規制措置、および人道目的の北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置を解除することとした。』(菅官房長官・5月29日発表)
ここで述べられている事は、「調査を開始する時点」で制裁を解除するということだ。つまり拉致被害者が全て帰還した時点ではなく、「調査を開始した時点」で解除され、ヒト・モノ・カネの往来が再開するということである。最悪、制裁を解除させられ、被害者は帰らないという事態も考えられる。
従って、私たちは1年かかると主張する「調査」というものをしっかりと見ておかなければならない。そして、経済制裁を再度行うというプレッシャーを与え続けなければならない。私は拉致被害者全ての帰還をもって解除とすべきだと考えるが、おそらく交渉が成り立たなかったのであろう。拉致問題に長年取り組んできた安倍総理を支持する一方で、果実のみ採られぬよう議会の立場からしっかりと見ていかなければならないと思う。






