できない農地集積協力金の交付
◇全県
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の大筋合意の中、日本の主力農産物のコメは厳しい環境が予想されている。そこで国では、十年間にわたって農地を集約化・集積化して、価格競争力を高めようと、昨年度から県を通じて「農地中間管理事業」を始めている。この事業は県が国から機構集積協力金のための補助金をもらって、それを基金に積み立て、農地の「貸し手」に集積協力金として交付する仕組みだが、基金が足らなくなり集積協力金が支払えない事態が起こり、事業を実施する市町担当者は「見通しが甘い」と県や国に対し憤っている。【石川政実】
「農地中間管理事業」は、図のように公的機関である「公益財団法人県農林漁業担い手育成基金」(県、市町、農業関係団体などが出資)を県が「県農地中間管理機構」に指定し、市町などの協力により農地の「貸し手」「借り手」を仲介し、農業経営の規模拡大や新たに農業を始める「借り手」に農地を貸し出す仕組みである。
例えば兼業農家がリタイア(廃業)することを決めて農地を新しい担い手に十年間貸し付けようとした場合、農地を「機構」に預けて、「機構」が農地の新しい担い手である「借り手」を募集してマッチングさせ、新しい「借り手」に貸し付けるもの。この折、機構集積協力金は農地の面積に応じて、県が集積協力金として「貸し手」に交付される。個人(戸)と地域(集落営農組織など)などが対象になる。
昨年度は、県の目標である集積面積二千三百四十ヘクタールに対し、「機構」の仲介で貸し手、借り手で契約が成立したのが一千八百六十三ヘクタールだった。
貸し手の内訳は、自ら耕作している個人が約一千戸=集積協力金の交付額・約四億五千万円、集落営農組織等の地域が五十地域=約五億円、その他(集積に協力して一部の農地を貸し付けたケース)が約三千万円―の計約九億八千万円だった。
県は二十六年度分として国から機構集積協力金のための補助金として約十三億円を交付してもらい、その全額を基金に積んだ。ここから九億八千万円を集積協力金として交付したため、基金の残りは約三億円になった。
今年度から国の方針が変わり、農地面積の寄与度などで順位を設けて優先的に集積協力金を交付することになった。このような制度変更に加え、六月に国が県を通じて市町の申請見込みの調査をした結果、現在の三億円の県基金で十分に対応できると国が判断し、補助金の追加はなされなかった。
そして機構がその後、貸し手と借り手を募集したところ、貸し手側では自ら耕作している個人が約六百戸、集落営農組織など地域が五十九地域、すでに農地を集落営農や機構に預けた七百戸があった。
これに対し借り手も面積的に十分あったものの、三億円の基金の範囲内ではとても交付できず、優先配分できるのは自らが耕作の六百戸→三百戸、五十九地域→二十地域にとどまり、またすでに集落営農に預けている七百戸は協力金の対象から外された。
実際に農地の貸し手、借り手に説明してきた市町は両者から批判の矢面に立たされている。
県では「国が現在、実績見込み調査をしているが、基金の積み増しの予算を組んでくれる可能性は不明だ」と弁明する。
これに対し湖南地域のある市担当者は「明らかに県や国の判断ミス。今年度の基金積み増しの補助金を早くに国へ要望すべきだったのに、していなかったからこんな無様なことになった。これではTPP対策など進むはずがない」と激しく県や国を批判している。





