県政NOW 「自己責任社会」から「頼り合える社会」へ
「頼り合える社会をめざして」というテーマで慶應義塾大学経済学部教授の井手英策先生のお話を聞く機会がありました。井手先生は財政社会学の立場から人口減少あるいは低成長が続く社会における社会保障制度のあり方について様々なご提言をされています。
厚労省の「国民生活基礎調査」によると2014年の数字で世帯収入300万円未満が全体の33パーセント、400万円未満ですと47パーセントで世帯収入はこの20年でなんと2割近く低下しているそうです。しかし、国の財政支出を見ると年金、介護などの高齢者向け支出に比べていわゆる現役世代向けの支出の割合は先進国に比べて著しく低くなっています。つまり、現役世代は子育て、教育、病気、住宅など人生の大きな節目を何もかも「自己責任」で対応しなければならないことになる可能性があります。そして、貯蓄がなければ生きていけないような自己責任社会になっているにもかかわらず、1997年代から非正規雇用比率が増大し始め、貯蓄ゼロ世帯は二人以上世帯の3割、単身世帯では5割にも及ぶという調査結果があるそうです。こうした状況の中で井出先生は今の社会は誰もが生活不安におびえる社会であるという発想が大切で、所得制限をすることなく全員にサービスを提供することにより結果として格差を縮小し、成長力を強め、財政を再建することも期待できると主張されています。
もちろん税に対する国民の皆さんの認識を変える必要がありますが、弱者が弱者を攻撃するような分断社会を次の世代に残すことなく、先生の言葉を借りれば「家族のようにみんなで苦楽を分かち合い、人間が経済に消費される時代を必ず終わらせる」ことが必要であり、まさに「頼り合える社会」をめざさなければなりません。
政権が代わって高校授業料の無償化に所得制限が設けられるなどの制度変更がありましたが、社会保障や教育などの分野で所得によりサービスを受けられるものと受けられないものの境界を設けることは分断社会を助長することにつながるのではないでしょうか。
滋賀県の基本構想では「すべての人に居場所と出番があり、最後まで充実した人生を送れる社会の実現」という重点政策があり、このことは私の政治課題でもありますが、尊厳ある社会保障を確立するための税負担のあり方や制度設計を県民の皆さんとしっかり議論しながら構築し、この重点政策を推進していきます。
「生まれた時の運・不運で人生が決まる社会を終わらせる」という井出先生の言葉が深く心に刻まれました。






