びわリハ大 発! 「豊かな心と明晰な知性を兼ね備えた医療専門職の育成」
私は、“生理学”という科目名で人体機能、例えば心臓とか神経の働きについて教授しています。これまで学生として大学と大学院を大阪大学、その後は教育研究者としてハーバード大学、愛媛大学、京都大学を経て現職に至るまで長く大学の教育に関わってきました。このコラムでは、私が受けた授業の話をしたいと思います。
当時大学生の私は非常勤で来られた有名な文化人類学者の講義を受講しました。東南アジアの未開地で少人数のグループで移動しながら狩猟採集生活をしている原住部族についてのフィールドワークの話でした。その講義の中で、彼らは私たちがもつ通常の時間感覚とほぼ同じくらいの確かさで複数の時間をもって生活しているという話がありました。その時間の一つに“成熟する時”というのがありました。全ての物事には成熟する時があり、彼らは心豊かにその時がくるのを待つということでした。例えば、美味しい果物が木になっているのですが彼らは木に登って取ったりせずに成熟して落下してくるまで待つというのです。当時、私を含め下宿生は大体腹を空かしていました。下宿の友人達にこの話をしてみたところ「そら、落ちる前に取って食べるやろ」と、彼らも私と同様に果物が落下するまで待つという神々しい文化をもつ人達やその厳粛な時間の感覚の根源について理解できませんでした。私の研究分野の大脳生理学でいうと「大脳皮質は視床下部のエネルギーをいかに制御するか」*という大きなテーマに繋がります。
さて、この講義の骨子は、我々は文明という便利なものを身にまとうかわりに、時間の感覚などの豊かな心を脱ぎ捨ててしまったということです。私どもの大学では豊かな心を大切にしています。専門的な知識と技術を身につけるばかりではなく、特色的な展開科目やさまざまな地域貢献事業を通して、他者への思いやりの心をもつ学生を育成しています。豊かな心と明晰な知性を兼ね備えた医療専門職となって地域医療に貢献してくれるものと期待しています。
*大脳皮質は理性に、視床下部は食欲などの本能にそれぞれ関わる脳領域
びわこリハビリテーション専門職大学
東近江市八日市東浜町1-5 TEL0748-20-1212






