「暮らし観光」視点でまちへ 大矢 沙代
2022年7月に大阪市から近江八幡市へ移住し、現在は観光まちづくり分野の地域おこし協力隊として活動しています。
1年目は、近江八幡市の観光における魅力と課題を知るために、まちを歩き、観察し、人と出会う機会を重ねていきました。そこから私なりに感じた魅力は、「日常」を感じることができるまちなみが残っていること、旧市街は見せるためのまちではなく生活する人がいるまちであることです。課題は、限られた場所に短い時間だけ立ち寄るケースが多く、滞在時間を延ばすこと/リピートを増やすこと/ファンを増やすことだと考えました。
活動スタート時に出会ったのが「暮らし観光」という言葉です。その考え方やまちにもたらす効果などを知り、近江八幡の魅力伝達手段として、課題解決手段として、暮らし観光は最適と考えました。暮らし観光とは、これまで当たり前とされてきた、名所旧跡や温泉を巡るような観光ではなく、その地域独自の暮らし―地元の人に親しまれているお店や食べ物、文化などを楽しむ観光のこと。観光にとどまらず、まちの魅力を再発見することで移住や関係人口を増やすことを促し地域のつながりを醸成する取り組みとして、日本の各地で暮らし観光を実践している自治体や民間事業者が存在します。2022年に改訂された近江八幡市観光振興計画で掲げられている「近江八幡ライフスタイルツーリズム」という理念にも通じると感じています。
2年目以降は、暮らし観光を手段として、日常の暮らしや文化の体験、まちの人と観光客との交流が生まれるような活動をしています。具体的には、「SNSでの情報発信」、「まち歩きマップの製作」、「暮らし観光まち歩きイベント」、「エコバッグスタンプラリー」、「ZINEの製作」、「『日常記憶地図』インタビューの実施」などをおこなってきました。
近江八幡という存在と、ならではの魅力を知ってもらうために、instagram/note/SMOUTなどの各種媒体を活用しての情報発信や、ZINE(ジン)と呼ばれる小冊子の製作や出品をおこなっています。滞在時間を延ばす/リピートを増やす/ファンを増やすために、自ら情報を取得し能動的に旅をする層に向けて発信することを特に意識しています。また、各企画において、観光客と地域の双方向コミュニケーションが生まれるような工夫を盛り込んでいます。たとえば、暮らし観光まち歩きでは、必ず「まちの人との交流がある」、「参加者同士の交流がある」、「体験がある」、「市外の参加者/市外の参加者が混ざる」ように設計しています。
ひとりの力で3年間でできることは限られていて、まだまだだという途方もない気持ちになることもあります。ですが、近江八幡への関心をより深め、リピート訪問や移住に繋げることができ、一定の成果はあげられたと自負しています。少しずつ知り合いも増え、協力隊終了後のことを心配してくださる方々もいらっしゃいます。ぜひまちに残って欲しいと言ってもらえると、小さくても私らしい働きがこれまでの活動においてできたのだと感じられてとても嬉しいです。活動中やいち移住者として生活するなかで、活動に関心をもってくださる方々や地域の方々から、私自身がたくさんの気付きをもらっています。
地域おこし協力隊らしく「行政でも民間でもない立場だからこそできること」を意識しているため、かたちや純度を変えずに今の活動を続けていく術を思案中です。いま目の前にある近江八幡のまちの魅力は、人々の日常の営みの積み重ねであると感じます。暮らし観光を手段とした活動を今後も続け、そうした近江八幡ならではの魅力を伝え続けたいと考えています。







