日本型グリーンツーリズム「近江日野田舎体験」
「子どもたちがヘビやカエル、バッタなど自然を楽しんでいる様子を見て、私たちの生活で当たり前のことが幸せであると再認識した」と語るのは、小学生の農村民泊を受け入れた日野町内の家庭。三方よし!近江日野田舎体験推進協議会(藤澤政男会長、事務局=町商工観光課)が、新たな地域産業創出を目指して展開中の“体験型観光と農村民泊”をセットにした「田舎体験」に、まちおこしの秘策が隠されている。
◇日野町版三方よし
日野町は、総務省・文部科学省・農林水産省の三省連携事業「子ども農山漁村交流プロジェクト」(全国の小学生約百二十万人の参加を目標に農山漁村での長期宿泊体験活動の普及を図るもの)のモデル地域に指定されている。
事業主体の三方よし!近江日野田舎体験推進協議会が、行政や各種団体の後ろ盾を得て、住民主導で目指すのは“来るものよし・迎えるものよし・地域よし”という日野町版三方よしの実現だ。
人おこしでまちおこし
◇初の受け入れ
昨年七月、東大阪市内の小学五年生約百七十人を、町内四十六軒が受け入れた。
食事の仕度はもちろん農作業や日曜大工など、各家庭の持ち味を体験プログラムに注入。都会っ子たちはナスビにとげがあることや近くにスーパーがなくても生きていけることを学んだ。
二泊三日の短期間ながら、家族で囲む食卓やおすそ分けの習慣が残る近所付き合いから温もりを感じ、別れ際には大粒の涙を流した。
夏休みに両親と民泊先を訪問した児童もいて、受け入れ家庭は「次に受け入れるときは、子どもたちに『第二の故郷』と言ってもらえるような真心で接したい」と自信を深めた。
◇教育効果アップへ
今年は、修学旅行や野外活動として県外の中学校三校の受け入れが決定しており、受け入れ家庭の輪も百軒にまで拡大。同協議会事務局は「向かい合い目を見て、しっかり話しをするところから始めてほしい」と、言葉のキャッチボールで教育効果を高めるよう受け入れ家庭に指導する。
◇地域間競争の中で…
全国の観光関係者らが和歌山県に集結した“オーライ!ニッポン和歌山シンポジウム”で、先進事例発表を行った同町商工観光課・加納治夫主任は「緊張感のある交流を大切にしている」と報告し、心の触れ合いから生まれる思いやりや相手を理解しようとする気持ちに目を向ける。
和歌山大学観光学部地域再生学科長の藤田武弘教授も「人間が人間らしさを取り戻す事業。飾らぬ暮らしと心の見える交流が始まった」とし、目先の効果ではなく息の長い取り組みの必要性を強調した。
ほんものから生まれる交流
◇交流なくして観光なし
事業継続には、地元住民とともに地域資源に磨きをかけ商品化する人材・仕組みがカギを握る。現在、湖北・湖東・東近江地域の四市七町(彦根・長浜・東近江・米原・安土・日野・竜王・愛荘・豊郷・甲良・多賀)は、訪問者にとって無意味な市町の境界を越えた連携のもと「びわ湖・近江路観光圏」を形成し、滞在型体験旅行の強化に乗り出した。
旅の総合窓口を担う近江屋ツアーセンター・田渕正人所長は「滋賀県自体が観光認知度・魅力度とも低く、情報発信力も弱い」と指摘、「田舎の生業や暮らしが、殺伐とした都会で暮らす人々には魅力に映る。これからは環境・健康・交流の3Kが、人を呼び込むキーワード。自分たちの地域を知ること・知られることが喜びとやりがいを生み、持続的なまちづくりへとつながる」とし、四市七町の一体化に奔走する。
◇地域の光
「一方通行の観光ビジネスを発展させたいのではなく、その奥にある地域の光を見てもらえるような田舎体験を提供したい」。宣伝活動で全国を駆け回る中、日野町商工観光課・福本修一主任は「人とのかかわりで地域が変わる。地域振興で最も重要なのは、人が元気になることだ」と痛感。藤澤直広町長も田舎体験を「心の観光」と位置付け、近隣市町への広がりを期待する。











