人づくりのプロ・黄瀬さんに聞く
「一人でも生きていける力を身に付けさせるのが私なりの愛」と語るのは、十三万人を超える人材育成と雇用・起業支援実績を誇る有限会社アイ・キャリアサポート代表取締役の黄瀬紀美子さん(59)。八月一日から県立男女共同参画センターで始まる“女性のチャレンジ支援講座 キャリアアップコース”の講師であり、人づくりのプロに、夢の実現に欠かせないものとは何かを聞いた。【櫻井順子】
●明治生まれの母
三十年以上前の大手通販会社勤務時代、女性社員で初めて京都への転勤を命じられた黄瀬さん。「好きにすればいい。だけど、親の死に目にあわないつもりで行きなさい」。明治生まれの母の一言が、ふるさと北海道を離れる決意といつの時代も自分の足で歩んでいく覚悟、生涯現役で仕事をするという確固たる心の芯を作った。
その後、三十代前半で結婚・出産、専業主婦として子育てに専念していた頃、舞い込んできたワープロ講師の仕事。生後八カ月の一人娘を抱え一旦断ったが、「あなたのチャンスを、どうして断るの。子どもは私が育てる」と親友の愛ある叱責で目覚め、自宅でのワープロ教室を皮切りに起業から二十五年が経った。
●信念と自覚
“誰の妻であろうと、誰の母であろうと、私は私。一人の人間として生きていきたい”との理念を持ち続け、特別な才能や経験、資金もない中で「自分の人生を全うする一歩として独立だと思った」。
経営難で夜逃げや自殺が頭をよぎったことも。七転び八起きの経験が人としての厚みとなり、夢の実現に燃える人たちへのアドバイスは重みが増し、母性愛にも似た愛のムチは深みを増す。
「子どもや主婦、女性、経験不足を言い訳にさせないところが、私の厳しい部分かもしれない。大事なことは、何が何でもやりたいという『熱意』とこうなりたいという『信念』、自分はプロだという『自覚』」。
●内なる声
女性のチャレンジ支援講座では、全十回のうち六回まで自己対話時間を設けて内なる声に徹底して耳を傾け、強み・弱みを客観視しながら、家の土台と同じ、揺るがない人生の核を築き上げていく。
「答えはすべて本人が持っているので、講師はあくまでもガイド役。自分の足で歩いて行きたいところへ導き、その人らしい生き方をサポートするのが役目」と、ビジネス界のマザーテレサを目指す。
●やっぱり“人”
分かっていても踏み出せない―。そんな頭で考え過ぎてしまう人に「他人と比べず、できない言い訳にエネルギーを使うよりも、今できることを一つずつ行動に移す」重要性を説く。
黄瀬さんは「何でも自分一人でできる、また一人でしなければと考えるのは、ちっぽけな世界。社会と接点を持ち、人の役に立って、求められることで自分の存在価値が感じられる仕事を通して、人とかかわれる喜びをもっと実感してほしい」という。
「仕事の失敗は人生の失敗ではない。失敗しても、もう一回やればいいじゃない」。そんな前向きなメッセージが、力強い一歩を引き出す。







