9月県会に上程された「流域治水条例案」(下)
「流域治水条例」案の制定を目指す県は、竜王町弓削地区で先人から伝わる宅地のかさ上げを浸水被害に備えるモデルの参考にしているが、肝心の地元からは「堤防が決壊すれば、宅地をかさ上げしていても、住宅はひとたまりもなく濁流に押し流される。河川整備を求める地域の声に応えないばかりか、行政の不作為を棚に上げ、住民に一方的に責任を押し付けるもの」と、怒り心頭だ。【高山周治】
県「堤防決壊まで想定していない」
住民「決壊すれば、ひとたまりもない」
県は条例案で、二百年に一度の大雨が降った場合、三メートル以上浸水する地域を「浸水危険区域」に指定し、住宅などの増改築・新築する場合は宅地のかさ上げか、避難所の設置といった建築規制を盛り込む。
日野川沿いの弓削地区は、この浸水危険区域に想定されている。竜王町の大半(図参照)は天井川である日野川と祖父川に挟まれ、中でも同地区は合流点に位置するのに加え、町内で最も標高が低い。
このため大雨が降ると両河川の水位上昇で、流入支川の排水ができなくなり、はききれない雨水が同地区付近にたまりやすいとされる。しかし、それ以上に住民が恐れるのが堤防の決壊だ。
坂田一男区長(64)は、「宅地をかさ上げしても、堤防が決壊すれば濁流に押し流される。報道も嘉田県政に追随し、在阪テレビ局はこちらの言い分を盛り込まず、かさ上げで全て事足りるような視聴者の誤解を招く放送をしたので、厳重に抗議した」と、県と批判精神のないメディアに怒りをぶつけた。
これについて県流域政策局は「宅地のかさ上げは水深のみを考慮したものだ。堤防決壊で生じる氾濫流は技術的な知見が得られていないので、今後の課題にしたい」と、釈明する。
また、町内八集落で構成する日野川改修促進協議会長の小森重剛氏(65)=町議=は「日野川は平成二十年、人的被害が予測される危険個所について優先的に整備するTランク河川に決定されたのに、しゅんせつや堤防強化といった対策がまだ実施されていない」と、問題視する。
とくに同地区付近は堤防が弱いだけでなく、流れが蛇行して非常に危険とされる。台風18号が直撃した十六日には、堤防の一部が崩落して決壊寸前だった。
同協議会前会長の片岡津留夫氏(76)は「平成元年の協議会発足から改修の促進を訴えて二十五年たつが、堤防補強やしゅんせつ等の応急対策もない。そればかりか、危険区域に指定して建築規制するのは無責任だ。自分の土地に家を建てるのに、なぜ罰則で規制されないといけないのか」と、県の不作為を指摘した。
(第一部終わり)








