パワースポット東近江は近畿圏と中部圏のど真ん中!!
平成二十年に新名神高速道路が亀山ジャンクション(JCT)から草津田上インターチェンジ(IC)まで開通したのに続いて、二十三年には東近江市と三重県をつなぐ国道421号の石槫(いしぐれ)峠道路石槫トンネルが開通し、昨年には名神高速の湖東三山、蒲生のスマートICが開業した。また北陸新幹線の敦賀以西が米原ルートに決まれば東近江地域などに新幹線新駅の設置が必要になってくる。加えて三十九年に東京~名古屋間でリニア―が開業すると、滋賀県の中心軸が東北部に移動する。そこで東近江や湖東のリーダーにお集まり願い、同地域のビジョンを聞いた。【司会・文責=石川政実、写真=畑多喜男】
石槫トンネルで一変
司会 石槫トンネルの開通やスマートICの開業など、懸案の道路網の整備が進んできましたが。
小椋 滋賀県は近畿で一番東、その中でも東近江市は最も東に位置しています。その果てに鈴鹿山脈があり、東西交通がうまくいかなかった。ところが、石槫トンネルの開通などで、当市は鈴鹿山脈を挟んで中部圏と関西圏の真ん中に位置するようになってきたわけです。この影響で、東近江市では三重ナンバーが大変増えています。関西より元気な中部経済のパワーをもらうことが大事です。
村西 愛荘町にできた湖東三山スマートICの利用台数は、一日平均で二千七百台と当初計画を大きく上回っています。傾向として、平日の利用者は事業用と産業用が多く、京阪神方面が三分の二、東海・北陸方面が三分の一です。ところが、土日の台数は平日よりも三百台減って、利用は東海・北陸方面が増え、約四割を占めています。事実、観光客は名古屋、北陸が多い。さらに蒲生スマートICも開業しましたから、これをどう生かすかです。海外に目が向いている製造業の企業誘致は簡単でないので、食品、物流、観光など内需型の六百社に案内状を送りました。 また東海・北陸を含め大規模広域防災拠点が誘致できないかと、いま研究しています。
小 椋 新幹線新駅設置で県庁移転
村 西 大規模防災拠点の誘致検討も
竹 山 もっとアウトレットの活用を
西 澤 オール東近江で着地型観光へ
冨士谷 交通インフラはあくまで手段
司会 竜王町の近くに、蒲生スマートIC(東近江市)が開業しましたが。
竹山 現在、竜王ICは栗東ICに次いで利用台数があります。北側には、三井アウトレットパーク 滋賀竜王 という大きな商業施設があり、休日は一万二千~一万三千台の利用台数に上ります。このうち六五%が県外です。それだけに、蒲生スマートICの開業で、少しは交通量が分散されるものと期待しています。アウトレットへは、京都、大阪から直通バスで来られるお客さんが多い。バス会社と連携すれば東近江地域全体にもっと足を運んでもらえるはずです。また竜王ICの南側の県有地では、県土地開発公社が滋賀竜王工業団地の造成工事に着手して、二十七年には第一期分譲が始まる予定ですので、企業誘致を積極的に進めていきます。
冨士谷 あくまで、まちづくりのツール(道具)として、湖東三山や蒲生のスマートICの活用は、一つの方法です。来る人が便利になっても、交通渋滞を招くだけなら、地元には迷惑なだけです。当市には、蒲生スマートICが一番近いですが、そこまでのアクセスが十分でない。竜王町田中の直角に交わったところに、阪神高速にあるような安価な出入り口・ランプをつくれば、通勤客も増えるはずです。
司会 観光面で、どう道路網の充実を生かしていきますか。
西澤 従来の観光は神社仏閣などがメーンでしたが、これからは例えば福祉ツーリズムのように、農、商、工などを含めた多面的な観光が求められてきます。中部地域から多くの人が来られていますが、弱い点は観光客に地域の中へ入ってもらえないことです。東近江には京セラやダイハツの工場などがありますので、これらを含めた“着地型観光”をやろうと、当協会では旅行業の資格を取ることにしました。地域の物産交流、工場見学、農村民泊、農業体験も一つの観光として、京阪神、中部地域への情報発信を東近江地域全体で行う必要があります。
不可欠な新幹線新駅
司会 工業に特化した東近江地域だけに、新幹線新駅など鉄道整備が大事になってきますね。
入榮 県内の製造品出荷額については、東近江地域がいずれ大津・湖南地域を抜いて県内一位になるでしょう。これは、京セラ、村田製作所、日電硝子など、日本を代表する企業が東近江に集中しているからです。今後は、いかに定住してもらえるかが課題ですが、定住してもらうには働き口が条件になります。しかし、いまは新規の企業誘致は難しいだけに、いかに既存企業を大事に育てるかです。 同時に行政、市民、企業、団体が一体となって、長期ビジョンに基づいたまちづくりを進めねばなりません。そのためには、新幹線新駅はもちろんのこと、運休している甲賀市の信楽高原鉄道(SKR)の復旧を県は全力で支援し、びわこ京阪奈線構想(注)の早期実現に努めるべきです。
司会 リニアがやがて開業し東京~大阪間が一時間で結ばれると、新幹線が新快速並みになります。北陸新幹線は米原ルートが有力視され、嘉田知事も新幹線新駅は必要との認識を示していますが。
冨田 栗東市の新幹線新駅はJR東海と契約を結び着工までしたのに、平成十八年の知事選で当選した嘉田さんがご破算にしてしまった。それだけに北陸新幹線については、知事を筆頭に県を挙げて敦賀以西での米原ルートをもっと本気で要望すべきです。
三年前に、JR東海関係者に「民間からの請願駅は可能か」と相談したところ、「ぜひ検討を続けてほしい」とアドバイスを受けました。そこで私は八日市商工会議所副会頭時代に、東近江市の五個荘に新駅をつくることを検討したところ、六十八億円から八十億円でできることが分かりました。近隣市町が一丸になれば、決して夢ではありません。また京阪奈線については、東近江地域が昔から関西圏につなげたいと進めてきた悲願です。しかしSKRを再建しないと頓挫します。県にも責任がありますから、もっと積極的にSKRを支援すべきですよ。
冨士谷 北陸新幹線は、コスト面からも米原ルートが常識です。いまの新幹線は飽和状態ですから、京都~米原間で待避駅が必要になってくる。新幹線新駅は、JR東海道本線の在来線に近い方が経済効果は上がります。東近江地域のどこに設置するか、県なりが音頭とって準備態勢をとるべきです。 ただ本州四国連絡橋で四国が発展したかと言えば、人口はむしろ激減しました。あくまで交通インフラは手段にすぎません。その意味でも近江八幡市と東近江市はもっと連携して、まちづくりを進めねばなりません。
入 榮 びわこ京阪奈線の早期実現を
相 馬 教育充実で医療従事者定住へ
三 井 環境こだわり農産物で活路!
冨 田 第2番目の中核市を目指そう
小椋 鉄道の問題ですが、JR東海道本線は地域間交通で、新快速がとまる能登川は京都・大阪の通勤圏であり、副都心として人口増が見込まれます。その一方で民間の近江鉄道は、地域内交通を担う大事な公共交通手段と位置づけています。
また新幹線新駅については、調査費を昨年の六月議会の補正予算に組み込みました。単に米原駅から京都駅までの真ん中に新駅が必要というだけでなく、県都をもう少し真ん中に持ってくるべきだと考えるからです。新幹線新駅は必ずしも五個荘にこだわっていません。
竹山 北陸新幹線が整備されるのに伴い、大陸に近いメリットを生かして港や飛行場の整備を併せて進めれば、中国からの集客が期待できます。人が早く動けば、経済も早く動くわけで、ぜひとも新幹線新駅を整備してほしいですね。
村西 SKRの被災は、近江鉄道も他山の石にすべきです。犬上川、日野川のような大きな河川があるので、SKRだけの問題でない。近江鉄道も橋脚が流れると廃線の憂き目になります。同社の経営努力に加え、沿線市町も支えていかないと無理ですね。
西澤 観光面で考えると、東近江地域は、京阪神方面からの来訪客が圧倒的に多く、関東はほとんどない。東近江地域に新幹線 新駅ができると、関東方面のお客さんがいままで以上に来られるはずです。
東近江に来られた観光客からお話を聞くと、不満は交通が不便なことです。近江鉄道は通勤通学のための利用で、観光客の利用がほとんどない。無人駅を見て「せめて一服する場所やトイレがあればいいのに」と指摘しておられましたが、ここらも課題です。
入榮 東近江は大きな事業所が多いだけに、新幹線新駅ができれば中部、京阪神圏からの通勤の可能性も出てきます。高速道路にはスマートICができました。新幹線新駅も、スマートICのようにコンパクトなものを考えるべきです。東近江や湖東地域の首長らが一堂に会して、鉄道交通の新たなビジョンを描いてほしい。それができれば企業誘致はもっとやりやすくなります。
医者を逃すな!!
司会 東近江圏域には、近江八幡市の市立総合医療センターと東近江市の独立法人国立病院機構東近江総合医療センターの二つの中核病院があり、日野記念病院や湖東記念病院といった特化した民間病院や開業医が連携して、高い水準の医療が提供されていますが、医療のマンパワー確保と交通アクセス問題については。
相馬 東近江地域の医師の数は、ほかの地域と比べて豊富になってきています。私どもの病院にとっても、湖東三山や蒲生のスマートICができて、京都市や草津市からも医師が来やすくなり、非常に歓迎しています。最近の患者さんは、医師と設備を選ぶようになっています。例えば湖東記念病院の脳外科医を求めて、患者さんが金沢市や外国からも来られます。そんな時代ですから、医師を滋賀県に住んでもらおうと思うなら、教育面を重視すべきです。
「滋賀県に中高一貫で有名大学に入れる学校をつくれば医師や看護師の人口がもっと増えます。それと交通網の整備です。新幹線を使って京都や名古屋の有名な塾に行く時代ですから」との声が医師の間で結構あります。余談ですが、竜王のアウトレット周辺に有料老人ホームがあってもいい。お年寄りに金持ちが多いと言われていますので、アウトレットで買い物を楽しむ。息子や孫らも買い物ができるなら喜んで見舞いにきますよ。
TPPと湖国農業
司会 滋賀県は米どころであり、近江牛も全国的に知られるなど、まさに農業県です。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加で関税撤廃になれば、これから東近江の農業をどのように進めていくべきでしょうか。
三井 県が昨年四月に、TPPで農産八品目が関税撤廃された場合の試算を行ったところ、二百四十九億円の生産減になりました。このうち米は百七十八億円の減少、牛肉も二十六億円の減少です。加えて治水や水源涵養(かんよう)など多面的機能の影響は二百八十八億円と試算しています。滋賀県は昔から江州米の産地で、兼業率も高い。やはり水田をいかに有効に活用するかです。 ある経済研究所の調査では、東近江地域は将来的にも経済が発展すると予測しています。そうなると、まちの中心部が高密度化して人口が増え、活力が出てくる。この周辺地域に、環境こだわり農業をうまく配置できるかです。今後の農業には、環境、健康、観光分野に対応した取り組みが求められてきます。
東近江はパワースポット
司会最後にまとめていただけますか。
小椋 東近江地域は、強くて豊かな地域です。そして歴史、文化、伝統が詰まっている。これに磨きをかけて、点在する観光資源を線で結ぶことです。品質が求められる時代なので、生まれてから死ぬまで、住んでよかったと思えるまちづくりを行い、全国から人が集まる地域を目指していきます。
相馬 地域の医療は、各病院同士の連携が大事になってきています。市長さんらには、東近江地域でそれが実現できるよう協力をお願いしたい。介護の問題も含めて、地域の病院の長が集まって、患者さんの立場で考える医療を協議すべきです。患者さんにとっては、民間も、官公立も関係ない。助かるか、助からないかだけですから。
西澤 東近江市観光協会としては、当市の観光振興ビジョンの推進に積極的に関わるため、着地型観光に取り組み、来訪者の増加に努めていきたいと考えています。
入榮 これからは孫、子に託せるまちづくりです。農業、工業、商業などが連携して、スマートIC、スマートレイルウェイ、スマートシティなど、コンパクトで持続可能なまちづくりのビジョンをつくり、東近江地域が協調して夢を次の世代へ託す努力をしなければなりません。
冨士谷 将来を見据えて見直すべき点がたくさんあります。一つは、びわこ揚水をはじめとする揚水事業です。わざわざ電気代を払って、琵琶湖から水を揚げて農業をしているわけです。もう一つは、ごみ問題。いかに資源として使うか。最後は流域で処理している下水道です。地震などが来たら破綻します。この辺りが、東近江地域が県の中核を担えるかのポイントですね。
村西 先日、同志社大学大学院教授の浜矩子さんの講演を聞きましたが、アベノミクスは成長戦略一本やりで、大企業のために地方が犠牲になるのは目に見えていると指摘されていました。これに対処するために東近江地域も競争から連携に向かうべきであり、行政がその旗振り役を務める時代を迎えています。
竹山 竜王町は、ダイハツの工場やアウトレットだけでなく、農業もしっかりとやっています。一万二千反の耕作地があり、農業、商業、工業のバランスがとれている。この形を生かして強みをつくり出そうと職員に指示しているところです。東近江地域も、特色を組み合わせることで、県内で中心的役割を担うことができると思います。
三井 米には、四つの価値と機能があります。一つ目は、大きな災害では、一番に米が求められることです。その意味で絶対的な必需品としての価値がある。二つ目は、高度な選択的に財としての価値があること。三つ目は社会の安定に寄与する機能、四つ目は社会を豊かにする機能です。これらをもっとPRしていきたい。東近江地域は、県の三割にあたる米の生産量があるので、環境こだわり農業を中心に進めていきます。農地には水源涵養を含めて治水能力などがありますから、これらの多様な機能を行政も施策に組み込んでいただきたい。
冨田 嘉田県政は環境、福祉面などで評価できる施策もありますが、商工農林業に目を移せば、産業の育成がほとんどなされてこなかった。昭和の時代、「東近江は一つ」という中部広域圏の話がありましたが、もう一度、再評価すべきです。大津市が志賀町と合併して人口三十万人以上の中核市となったが、このメリットを生かせていない。ならば東近江地域が県内二番目の中核市に名乗りを上げて、夢のあるまちづくりを進めるべきでしょう。
(注)びわこ京阪奈線構想=近江鉄道と信楽高原鉄道を経て、新たな鉄道路線で京都府の関西文化学術研究都市、並びに大阪市中心部を結ぶ鉄道整備構想。滋賀県の関係自治体では、「鉄道建設期成同盟会」を結成している















