しゃれた外観や採光の工夫などヴォーリズらしい作風
文化庁の文化審議会は十八日、大津市京町の九品寺(くほんじ)所有、木造観音菩薩立像(平安時代)など二件を重要文化財(美術工芸品)に指定し、近江八幡市北之庄町のヴォーリズ記念病院旧本館(大正時代)など六件を登録有形文化財(建造物)に登録するよう文部科学大臣に答申した。
これにより、県内における美術工芸品の重要文化財は六百三十六件(うち国宝三十三件)、登録有形文化財は三百四十六件となる。
今回、重要文化財に指定されたのは、九品寺の木造観音菩薩立像、眞光寺(大津市下阪本)所有の銅造観音菩薩立像(奈良時代)。
登録有形文化財に答申されたのは、ヴォーリズ記念病院旧本館のほか、彦根市鳥居本町の寺村家住宅主屋(昭和十三年)、多賀町西角の旧一圓家住宅の主屋(安政四年=一八五七年)と文庫蔵(明治前期)、米蔵(江戸末期)、雑蔵及び木蔵(同)の六件。
このうち、近江八幡市のヴォーリズ記念病院旧本館(公益財団法人近江兄弟社の所有)は、病院建築として古い歴史をもつとともに、建物の外観や病室の採光、通風など、人にやさしい設計を重視するヴォーリズの作風がよく現れている。
同館は、結核療養のためのサナトリウムとして、大正七年(一九一八年)、ヴォーリズ建築事務所の設計により建設された。創立にあたっては、米国のメアリー・ツッカーから多額の寄付を受けたため、別名「ツッカーハウス」とも呼ばれる。
木造二階建てで、一部が三階建てになっており、屋根は瓦葺、建築面積は三百五十平方メートル。正面外観は左右対称になっており、中央は三階建て切妻造り、両翼は二階建て。
正面中央部分に半円アーチ型の玄関ポーチを配置し、その上部に出窓を設け、当時の病院としては、明るく、瀟洒(しょうしゃ)なイメージを与える。
病室の南側全面に設けられた窓は、すべて両端を手前に引き込んで開放でき、結核療養に必要とされた採光と通風を確保する。建物両端の張り出した部分には日光浴室が設けられている。
このほか、重要文化財に指定された九品寺(大津市)木造観音菩薩立像は、高さ百七十センチ。筒型の冠をかぶり、温和な表情で浅く鎬(しのぎ)を立てた彫り方から十一世紀初めの制作とみられる。仏師定朝(じょうちょう)による和様彫刻の成立を考える上で重要な作例だ。
眞光寺(同)の銅造観音菩薩立像には、面長で引き締まった表情、若やいだ体つきは初唐様式の影響がみられ、平城遷都(七一〇年)前後の作例と推定される。
また、登録有形文化財となった寺村家住宅主屋は、和室中心の住宅で、応接間や階段回りなどはヴォーリズらしいおしゃれな意匠でまとまっている。
旧一圓家住宅の主屋などの建造物は、一円集落の名主クラスだった家の住宅。主屋は鍵の手に座敷を並べ、要所に座敷飾を備える。文庫蔵は、主屋の内蔵として使われた。米蔵と雑蔵、木蔵など多くの蔵が主屋に連なって建てられ、江戸末期から明治期の旧家の屋敷構えを今に伝える。(高山周治)











