栗東市内の児童クラブで不適切保育疑惑
【栗東】 栗東市の民設民営の放課後児童クラブ(注)の代表から当時小学2年生の高橋真由美さん(仮名)が虐待を受けたと疑われる事案が発生し、心的外傷後ストレス障害になった問題で、児童クラブ代表は「その事実はない」と否定して、双方の主張が対立し、市は「事実確認はできない」を繰り返すばかり。そこで学童保育運営支援アドバイザーとして知られる、あい和学童クラブ運営法人代表理事の萩原和也氏(55)=埼玉県上尾市在住=に今回の問題の本質を聞いた。(石川政実)
―市の初動対応が遅れてしまったが。
萩原 母親(圭子さん)から23年10月、不適切保育に関する訴えを受けて、事業所の立ち入り調査を行うまで約半年、(母親からの申し出で)A児童クラブの退所児童へのアンケート調査を約1年を過ぎて実施するなど、その対応の遅さはずさんだ。市は、民設の児童クラブに対しても補助金を交付している限り、「設備及び運営に関する基準を定める条例」に従って対応するべきであり、民設クラブ事業者が「放課後児童クラブ運営指針」に記されているように保護者や利用児童への対応をしっかりと行っていたのか、管理監督する責任がある。実際に、児童クラブの利用児童が治療を要する心的傷害を負った事実がある以上、またその心的傷害の因果関係について当事者間で争いがある以上、市は事実関係の究明に速やかに取り組むべきだった。市の不作為によって起こった結果は重大だ。
―保護者と児童クラブの対立については。
萩原 児童クラブを利用していた児童が因果関係は不明であっても、心的傷害を負ったことも事実である。では、なぜ児童が心的傷害を負ったのか、双方に主張の食い違いがある以上、第三者による原因究明の試みは必要だ。原因究明への取り組みを放置したままでは、児童が救われない。
―市に第三者委員会の設置を考えるべきか。
萩原 可及的速やかに外部の専門家による第三者委員会等による調査が必要である。ただ時間経過がはなはだしく、現状において児童の心的傷害に関する因果関係の解明が不可能であるとしても、できうる限りの調査は必要だ。第三者委員会等は、「事実の究明」だけをするのではなく、「行政の対応の遅れの原因」と「児童クラブ運営事業者の事業執行体制」および「再発防止」について、調査と提言をすべきである。
傷つく子どもを見放すメディアは悲しい
あい和学童クラブ運営法人代表理事 萩原和也氏に聞く
―マスコミがこの不適切保育疑惑を報じないことについては。
萩原 市側の記者会見で、市の幹部が対応の遅れについて公式に認めている以上、何らかの問題が行政執行部にあったことは明白である。また、児童クラブを利用していた児童に心的傷害が見られ治療を要している事実もある。なぜ、児童が被害を受けたのか、その原因は不明であるとしても、児童クラブという社会的に重要な児童福祉の事業場で起きた可能性がぬぐえない事案について、報道機関が取材や報道に消極的であることは、私には到底理解できない。
次代を担う子どもの健全育成に、国や地方自治体は、税金からなる補助金を交付している。児童クラブはいわば公の事業であって、その事業において子どもに重大な人権侵害が行われた可能性があることが、報道されないということは、ニュースバリューの判断基準そのものが間違っていると指摘せざるをえない。
子どもが深く傷ついているのにメディアが見て見ぬふりをする社会はあまりにも悲しい。
(注)放課後児童クラブ=児童に適切な遊びと生活の場を提供し児童の育成支援をするもので学童保育の仕組みの一つだが、今後、本紙では学童保育所を「放課後児童クラブ」の表記に統一します
【遅れた市の対応の経過】2023年10月、母親の高橋圭子さん(仮名)は娘の真由美さんが市のA放課後児童クラブの代表から同年7~8月ごろ、児童虐待を受け心的外傷後ストレス障害になったと同市子育て支援課に訴えたが、担当係長は同年11月に県から指摘を受けるまで母親に連絡をしなかったという。
咋年2月になってようやく藤井真理子課長も母親と連絡を取る始末。同年3月に市の仲介で圭子さんと児童クラブ代表が話し合ったが、「怒鳴った」「言ってない」と双方の主張が食い違った。同年4月から人事異動で山本新一課長に代わってから4~5月になって、はじめてA児童クラブの立ち入り調査を実施したが、支援員らがそのような事案は記憶にないと否定したため、原因究明ができずに終わった。同年8月、圭子さんは市に対しA児童クラブを退所した児童や保護者への聞き取り調査を申し入れた。
市は重い腰を上げ、10月下旬から11月初旬までアンケート調査を実施したものの、「事実確認はできなかった」と同年12月、母親に調査結果を報告した。母親の市への訴えから約1年が過ぎた調査には限界があった。
なお昨年11月の市長定例会見で村瀬信幸・こども家庭局長は市の初動対応の遅れを認めた。






